The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PC(01-64)

ポスター発表 PC(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 3:30 PM - 5:30 PM 展示場 (1階展示場)

[PC33] ICT活用授業における学習モチベーションの維持

プロジェクタを利用した光色の提示効果

今野紀子1, 土肥紳一2, 宮川治3 (1.東京電機大学, 2.東京電機大学, 3.東京電機大学)

Keywords:ICT, 学習モチベーション, 光色

目   的
 筆者らは,教育のアウトカム指標として注目されている学習モチベーションの維持向上のための教室環境に関する調査・研究を行っている。感覚刺激である「香り」や「光(照明)」を用いると,学習モチベーションの向上に一定の効果があることを既に確認しているが,色彩照明を用いた効果では,提示する光色によって緊張感・混乱・疲労感・活気が変化することが確認できた1)。教育現場のICT利活用が進み,小中高においてもPCを導入した授業が増えているが,本研究ではICT活用授業(科目名「情報心理学」)において,プロジェクタで教材を提示する際に短時間の特定光色の提示を行い,学習者(受講学生)のモチベーションに与える影響を調べた。学習者の集中力がやや低下し,疲労感が出始める授業開始後30分を目安に,光色の提示を1回行った結果,学習モチベーションに関連する気分に生じた変化と効果を報告する。
方   法
(1) 対象:2015年11月上旬,大学生39名(男性32名,女性7名[平均年齢20.9±1.7歳])を対象者とした。
(2) 方法:蛍光灯による直接照明(最大照度706lx,最小照度401lx)の教室で,プロジェクタ(Panasonic PT-D5700 XGA6000)2台を用い,スクリーン(120インチと100インチスクリーンを並列設置)に授業コンテンツを提示ながら30分間一斉授業を行った。その後,同じスクリーンに単一光色を30秒間提示した。過去の色彩照明の研究結果1)から,混乱度が高まる可能性の高い紫・赤を除いた,黄・青・桃・緑・橙の5色を使用した。使用各色をFig.1のCIE色度図に×印で示す。
 xy座標値はともに3回計測した平均値を示している。計測には色彩照度計 (KONICA MINOLTA CL-200A)を用いた。
(3) 評価指標:一時的気分尺度(徳田,2011)2)の6下位尺度中,モチベーションに関連する緊張・混乱・疲労・活気の4下位尺度を使用した。各質問項目をTable1に示す。下位尺度はそれぞれ3質問項目で構成されている。各質問項目についてVisual Analog Scale(0-100%)により評価し,3項目の平均値を緊張(tension)・混乱(confusion)・疲労(tiredness)・活気(vigor)の各得点とした。
結果と考察
 各光色による気分変化結果をTable 2に示す。Scheffe多重比較検定の結果,黄色光の提示により,活気が1%水準で有意差に上昇することが認められた。
 本研究ではICT活用授業における学習モチベーションの維持向上の方法を検討し,疲労で集中力が低下し始める授業開始後30分頃に,授業コンテンツ投影を中断して黄色光を30秒間提示することで,学習者の活気が高まりモチベーションの維持に資する可能性が示唆された。今後は,学習者のPC画面やタブレット端末の画面上に光色を提示した場合の効果・作用について検証を行いたい。
参考文献
1) 今野紀子,土肥紳一,宮川 治:モチベーション向上のための教室環境づくり-色彩照明による検討,日本教育心理学会第56回総会発表, p.374(2014)
2) 徳田完二:一時的気分尺度 (TMS) の妥当性,立命館人間科学研究 22, pp.1-6(2011)