日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PC(65-84)

ポスター発表 PC(65-84)

2016年10月8日(土) 15:30 〜 17:30 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PC67] 体育科教師の教育評価測定指標の開発

高校生による体育授業参加にもとづく測定評価

清水安夫 (国際基督教大学)

キーワード:体育教師, 運動好き, 運動嫌い

問題と目的
 日本の年間医療費は7年間連続して増加し,ついに40兆円を超えるに至った(厚生労働省,2015)。現在,年間医療費の約30%を生活習慣病が占有していることから,健康日本21では,「身体活動」や「運動」を予防要因として重視しており,具体的な活動目標を立て促進を図っている(多田羅,2001)。一方,現代日本における青少年の運動習慣は二極化しており,1週間の総運動時間が60分未満の小学生は21.0%,中学生は29.9%となっている(文部科学省,2013)。また,身体を使わない遊びや運動不足が原因と推定されている,「片足立ちが出来ない」「前屈姿勢で指先が地面に着かない」「しゃがみこみが出来ない」などの運動機能の低下が,就学前の子どもたちの約20%に見られるという報告もある(島根大学,2011)。さらに,新体力テストと運動実施頻度との関係から,生涯にわたって体力を高い水準に維持するためには,運動が不可欠な要因であることが示されている(文部科学省,2013)。
 これらの現代の子どもたちの問題を受け,体育科の学習指導要領には,児童生徒の心身の健全な発育および生涯にわたっての健康づくりを意図した目標が盛り込まれている。一方,学校体育が嫌いな子どもたちも増えており,概ね体育嫌いの子どもたちは,運動することも嫌いであることが報告されている(熊谷・池田,2013)。また,小学生の場合,「体育好き・体育嫌い」には,教師の行動との間に関連があることが報告されている。とりわけ,小学生の運動有能感と教師の体育授業における望まれる行動には,有意な関係性が示されている(村瀬ら,2013)。
 そこで本研究では,生涯にわたり健康な身体づくりに欠かすことのできない運動行動の促進に必要な技術や知識を学ぶ機会である,高校生の学校体育における体育教師の教育評価を行うための測定指標の作成を目的とした。
方   法
1)調査対象:高校生314名(M:157名,F:157名,平均年齢:16.95歳,SD:0.50)
2)調査方法:インターネットによる調査
3)測定指標:体育教師版評価尺度(原案)
4)分析方法:探索的因子分析,信頼性分析
結   果
 探索的因子分析(最尤法,promax回転)の結果,6因子(各4項目)が抽出された。信頼性分析の結果,Cronbachのα係数は,0.72-0.94が示された。この結果をTable 1に示した。
考   察
 探索的因子分析の結果,体育教師版の教育評価測定尺度から,6因子(各4項目),合計24項目が抽出された。また,信頼性分析の結果,抽出された各6因子の信頼性は統計学的にも許容範囲内であることが示された。
 抽出された各項目の内容的な共通性より,第1因子から第6因子まで,それぞれTable 1に示した因子の命名を行った。特に,第1因子に「教師自身が体育の授業に参加する姿勢を示しているか」という内容の共通性を持つ因子が抽出された。そのため,高校生の場合,体育教師に対して,自らも率先して授業参加を行い,生徒と汗を流すことが期待されていることが推察された。また,「対人関係の促進」への期待,「的確な指導」や「各生徒への公平性」など,動機づけと深く関わることが予測される因子が抽出されたため,今後は,動機づけ尺度等との検証を進めたいと考えている。