日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PC(65-84)

ポスター発表 PC(65-84)

2016年10月8日(土) 15:30 〜 17:30 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PC68] 自己評価および自己像の不安定性といじめ,登校嫌悪感との関連

原田宗忠1, 中井大介2, 黒川雅幸3 (1.愛知教育大学大学院, 2.愛知教育大学, 3.愛知教育大学)

キーワード:自己評価, 自己像の不安定性, いじめ

問題と目的
 本研究プロジェクトは,いじめや不登校を未然に防ぐために,自己評価や自己像の不安定性が予測因となることを検証することが目的である。
 自己評価は,これまでにも不登校などの社会的不適応と関連が示されてきた(e.g.,粕谷・河村,2004)。しかし,原田(2015)は自己評価について,1)領域別ではない全体自己を捉えること,2)肯定/否定次元を区別すること,3)個人/社会基準を区別すること,といった多面的な理解が必要であることを指摘している。
 また,自己像が不安定であることは,自尊感情の基盤が不安定であると考えられ,実際に日常の自尊感情レベルが低いことが明らかにされている(小塩,2001)。こうした自己像の揺れといじめや不登校については十分検討されていない。
 以上から,本研究では,いじめや不登校を予測する概念として自己評価や自己像の不安定性を挙げ,原田(2015)では検討されていない学校種差や性差を検討し,登校嫌悪感やいじめ加害/被害経験との相関関係を検証することが目的である。
方   法
調査対象者 小学校5,6年生512名(男子264名,女子248名),中学校1~3年生963名(男子475名,女子488名)の計1,475名であった。
質問紙 (1) 短縮版自己評価尺度(原田,2015)12項目。(2) 自己像の不安定性(小塩,2001)5項目。(3) 登校回避感情測定尺度(渡辺・小石,2000)のうち,「登校嫌悪感傾向」因子に高い負荷を示した6項目。(4) 中学生用ストレス反応尺度(岡安・嶋田・坂野,1992)のうち,「不機嫌・怒り感情」,「身体的反応」,「抑うつ・不安感情」,「無気力的認知・思考」から2項目ずつ計8項目。(5)いじめの被害経験(3項目)と加害経験(3項目)(岡安・高山,2000)。今の学年になってからのことを回答してもらった。この他にTS-WHY(原田,2008)や相談相手,勉強,友人関係,いじめについて見聞きしたかなどについても測定している。本研究では,(1)~(5)のみ分析に使用した。
結   果
短縮版自己評価尺度 因子分析(主因子法,プロマックス回転)の結果,固有値の減衰状況(4.55,1.94,1.07,1.00,0.68,…)から4因子解と判断した。原田(2015)と同様に,「個人基準-肯定的自己評価感情」,「個人基準-否定的自己評価感情」,「社会基準-肯定的自己評価感情」,「社会基準-否定的自己評価感情」の4因子と解釈できた。信頼性係数はα=.83, .72, .84, .72であった。
自己像の不安定性 因子分析(主因子法)の結果,1因子であり,信頼性係数はα=.76であった。
登校嫌悪感傾向 因子分析(主因子法)の結果1因子であり,信頼性係数はα=.85であった。
中学生用ストレス反応尺度 因子分析(主因子法,プロマックス回転)の結果,岡安他(1992)と同様に4因子解であった。信頼性係数は「不機嫌・怒り感情」でα=.80,「身体的反応」でα=.58,「抑うつ・不安感情」でα=.77,「無気力的認知・思考」でα=.67であった。
いじめの加害経験/被害経験 因子分析(主因子法,プロマックス回転)の結果,2因子解(加害経験と被害経験)であった。信頼性係数は,「加害経験」でα=.80,「被害経験」でα=.74であった。
学校種差および性差 参加者間2要因分散分析を行った(Table 1)。個人基準-肯定的自己評価感情については,小学生および中学生における性別の単純主効果,男子および女子における学校種の単純主効果がみられた(いずれもp<.01)。
相関分析 尺度間の相関係数を算出した(Table 2)。