日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PC(65-84)

ポスター発表 PC(65-84)

2016年10月8日(土) 15:30 〜 17:30 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PC77] 不登校を激減させた方法(5)

初期対応の効果の検証と「たまったポイントカード」の利用

工藤弘 (安曇野市立三郷小学校)

キーワード:不登校, 自己効力感

はじめに
 工藤・小林(2010),工藤(2014)(2015)では,小中学校での不登校を激減させる方法が実証された(fig1.M小A中の不登校数)。
 これらの先行研究では,初期対応の「職員行動ルール」「自己効力感教育法」が有効であることが示された。
目   的
研究1.不登校を未然防止できる「職員行動ルール」による支援会議の各処遇のさらなる効果の検討。
研究2.相談室登校できた子どもを学級に復帰させるために,学校生活での大切な行動の自信が,学級復帰の自信へ汎化し,学級復帰をしていくカウンセリングシート「たまったポイントカード(以降「たまp」)」の有効性の実証。
方   法
対象 2012-15年度N県M小学校(約1000名)での不登校コーディネート事例151件。
研究1.うち123件について,相談1ヶ月前後の欠席について,次の9群にわけて処遇の効果を検討する。①戦略的約束タッチ登校(支援会議での約束に従い登校)②タッチ時間延長(登校が順調なので再び支援会議で時間延長)③児童主体タッチ(子どもが自分で決め登校)④駐車場支援(朝の駐車場での支援)⑤「たまp」利用(欠席しなくなった子どもに「学級復帰できるか」などの自信を高める訓練:自己効力感教育法⑥家庭登校助言(保護者がすることを助言)⑦登校に保護者条件(親の要望で欠席)⑧遊びで誘導(好きな遊びをさせ登校を誘う)⑨その他。
研究2.「たまp」を利用した4名について,学級復帰への自己効力感の変化を検討する。
結   果
研究1.グループごと分散分析を行った結果,図2のように,「戦略的タッチ登校」「駐車場支援」「家庭登校助言」で,欠席が減少した(p<.01)。
研究2.自信が高まり(p<.01)学級復帰ができた。
考   察
 以上の結果から,支援会議で「戦略的なタッチ登校」を進めるとともに保護者の理解のもとに約束を実行してもらうことが大切である。「たまp」によって,学校内での大切な行動の自信が汎化し,学級復帰への自信を高め学級復帰ができることがわかった。今回の「たまp」事例は少ないが,今まで多くの児童が「たまp」の利用で学級復帰を果たしたので,本論文で紹介した。
引用文献
工藤 弘・小林 武(2010).不登校を激減させた方法~尺度の作成と小学校と中学校の連携による中一ギャップの予防(その1).第52回日本教育心理学会論文集,p532
工藤 弘(2014).不登校を激減させた方法~中学校での激減と,小学校での激減の方法の共通性から.第56回日本教育心理学会論文集55,p854
 工藤弘(2015).不登校を激減させた方法(4)自己効力感教育法を利用したカウンセリングとコーディネートの実証.第57回日本教育心理学会論文集56,p121
謝   辞
 本研究にご協力頂いた学校関係者・研究所等の皆様,心より感謝申し上げます。