日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PD(01-64)

ポスター発表 PD(01-64)

2016年10月9日(日) 10:00 〜 12:00 展示場 (1階展示場)

[PD62] 大学生の愛着スタイルと親性準備性の関連

信頼感を媒介として

清水寿代1, 清水健司2 (1.広島大学大学院, 2.信州大学)

キーワード:親性準備性, 大学生, 愛着スタイル

問題・目的
 近年,精神的・社会的に未成熟なままで親になってしまう青年への懸念が高まり,青年に対する「親になるための教育」が求められている。本研究では,大学生の愛着スタイルに着目し,愛着スタイルによって親性準備性に違いが見られるかどうかを検討する。さらに,乳幼児期の経験を根底として形成されるとする基本的信頼感とより現実の人間関係に基づく一般的な他者に対する信頼感を意味する対人的信頼感を取り上げ,愛着スタイルと基本的・対人的信頼感が親性準備性に及ぼす影響を検討することを目的とする。
方   法
調査対象者 A県内の大学に在籍する学生85名(平均年齢21.2歳,SD=2.19歳 男性38名(44.7%),女性47名(55.3%))
調査時期 2014年5月に1回目(Time1),2ヶ月後である2014年7月に2回目(Time2)を実施した。
親性準備性尺度(Time2) 清水他(2014)による親性準備性尺度を使用した。本尺度は全10項目からなり,5段階(全くあてはまらない(1)~とてもあてはまる(5))で評定してもらった。
愛着スタイル尺度(Time1) 中尾・加藤(2004)による愛着スタイル尺度を用いた。全36項目のうち,回避5項目,不安5項目の10項目を抜粋して用いた。5段階で評定してもらった。
基本的信頼感尺度(Time1) 谷(1996)による基本的信頼感尺度を用いた。「基本的信頼感」6項目,「対人的信頼感」5項目からなり,5段階で評定してもらった。
結   果
 愛着スタイルの「親密性の回避」,「見捨てられ不安」を独立変数,「基本的信頼感」,「対人的信頼感」を媒介変数,「親性準備性」を従属変数とする媒介分析を行った。その結果,「見捨てられ不安」から「親性準備性」への直接的な影響力は中程度であった(β=-.24,p<.05)。次に,「基本的信頼感」,「対人的信頼感」を媒介変数として投入した結果,「見捨てられ不安」から「基本的信頼感」(β=-.71,p<.001)には影響が見られたが,「基本的信頼感」から「親性準備性」(β=.25,n.s.)には影響が見られなかった。一方,「見捨てられ不安」から「対人的信頼感」(β=-.52,p<.001),「対人的信頼感」から「親性準備性」(β=.27,p<.05)には影響が見られた。そして,「見捨てられ不安」から「親性準備性」への直接的な影響は認められなくなった(β=-.10,n.s., Figure.1)。
 同様に,「親密性の回避」から「親性準備性」への影響力を検討したが,直接的な影響力は見られなかった。
考   察
 本研究の結果,愛着スタイルの見捨てられ不安から親性準備性を媒介する変数として,対人的信頼感の重要性が示された。一方,基本的信頼感は,媒介変数としての効果は認められなかった。親密性の回避は,親性準備性に直接的な影響を及ぼさないことから,見捨てられ不安の高さが,対人信頼感を低め,結果として親性準備性が低くなる可能性が示唆された。