The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PE(65-88)

ポスター発表 PE(65-88)

Sun. Oct 9, 2016 1:30 PM - 3:30 PM 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PE82] 大学院生による心理的支援活動が高校生の学校生活に及ぼす効果

江角周子1, 庄司一子2 (1.筑波大学大学院, 2.筑波大学)

Keywords:心理的支援, 高校生

問題と目的
 近年,学校教育における児童生徒のニーズの多様化を背景に,スクールカウンセラーといった専門家だけでなく,心理学や教育学専攻の大学生や大学院生が学生ボランティアなど様ざまな役割で学校に入り,学習支援や心理的支援活動などの実践が行われている(杉本,2013)。
 筆者らも,様々な困難を抱える生徒が多く通う単位制高校において学生支援員(以下,支援員)として数年間,心理的支援活動に携わった。こうした活動を通した学生の変化や心理的成長について研究が不足しており(黒沢他,2008),またこうした活動が学校と学生にとって互恵的な活動である必要があると指摘されること(杉本,2013)から,江角他(2014)においては生徒理解および支援方法の変化の視点から,また鈴木他(2016)においては教師像の変化の視点から,活動が支援員に及ぼした影響を明らかにした。
 そこで本研究では学校側の効果を明らかにするため,支援員による心理的支援活動が高校生の学校生活に及ぼす効果を検討することを目的とする。
方   法
対象:支援員が心理的支援活動を行ったA県内の高校に通う高校1−4年生188名(1年生65名,2年生66名,3年生50名,4年生7名)。
時期:2016年1月下旬
内容:(1) フェイスシートでは学年,性別の回答を求め,次貢より(2) 支援員認知・利用度,(3) 支援員への相談ニーズとその理由,(4) 支援援員への相談経験とその効果,について回答を求めた。
結   果
1.支援員の認知度:支援員については117名(61.90%),支援員が活動する部屋(以下,相談室)については127名(67.20%)が「知っている」あるいは「まあ知っている」と回答した。クロス集計を行った結果,支援員と相談室いずれも1年生において「まったく知らない」の回答率が有意に高かった(順にχ2(9)=25.26,p=.003; χ2(9)=22.62, p=.007)。
2.支援員への相談ニーズ:支援員と話したいと思うかとの質問には59名(31.22%)が「そう思う」「まあ思う」と回答した。また,話したい内容については「友人関係」が最も多く(n= 31, 50.82%),次いで「進路」(n= 27, 44.26%),「恋愛」(n= 21, 34.43%)であった。
 つぎに,相談室に行きたいと思うかとの質問には63名(31.22%)が「そう思う」「まあ思う」と回答した。また,どのような時に行きたいと思うかとの質問については「時間が空いた時」が最も多く(n= 33, 53.23%),次いで「悩みごとがある時」(n= 32, 51.61%),「話を聞いてもらいたい時」(n= 25, 40.32%)であった。
 一方,「あまり思わない」「全く思わない」と回答した者に理由を尋ねたところ,「話すことがないから」が最も多く(n= 52, 47.27%),次いで「自分には必要ないから」(n = 47, 42.73%),「他に相談できる人がいるから」(n= 25, 22.73%)であった。
3.支援員への相談経験とその効果:支援員と話した頻度については61名(32.28%)が「よく話した」「ときどき話した」と回答し,クロス集計の結果,学年による回答の偏りは見られなかった。
 話したと回答した者について,支援員がいてよかったと思うことについて回答を求めたところ,「不安や心配な気持ちが落ち着いた」が最も多く(n= 28, 43.75%),次いで「明るい気持ちになった」(n= 27, 42.19%),「話し相手ができた」(n= 27, 42.19%)であった。また,学校生活を送る上で支援員がどの程度役に立ったかとの質問には,57名(83.83%)が「とても役に立っている」「まあ役に立っている」と回答した。
考   察
 まず,支援員および相談室認知度の結果から,半数以上の生徒に認知されていることが明らかになった。
 つぎに,一部の生徒において支援員への相談ニーズが高く,また支援員と話したい内容や相談室を利用したい時についての結果から,生徒にとって支援員や相談室が対人関係や進路についての悩みごとについて相談する相手,また,困りごとの有無にかかわらず居場所として機能していることが明らかとなった。加えて,支援員への相談ニーズの低い生徒の回答から,支援員や相談室が,援助ニーズの高い生徒や援助資源が豊かでない生徒の学校生活を支えている可能性が窺える。
 最後に,支援員への相談経験とその効果についての結果から,様々な困難を抱える生徒が多く通う学校において支援員や相談室が,一部の特に援助ニーズの高い生徒の精神面を支える効果を有し,学校において生徒を支える機能を果たしていることが明らかとなった。