The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PE(65-88)

ポスター発表 PE(65-88)

Sun. Oct 9, 2016 1:30 PM - 3:30 PM 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PE86] 続・国内の心理尺度作成論文における信頼性係数の報告状況

高本真寛 (横浜国立大学)

Keywords:心理尺度, 信頼性係数

 本発表は,国内の心理尺度の作成論文における信頼性係数の報告内容をまとめた高本(2014)および高本・服部(2015)を基に,査読誌ごとの特徴を明らかにすることを目的とした。
方   法
対象雑誌と論文の選定基準
 本発表では,高本・服部(2015)において作成されたデータベースを利用した。このデータベースでは,2001年度から2013年度までに“心理学研究”“教育心理学研究”“社会心理学研究”“実験社会心理学研究”“パーソナリティ研究”“発達心理学研究”の6誌で公刊された論文が対象とされた。該当論文の選定基準の詳細は,高本・服部(2015)を参照されたい。 
結果と考察
 6査読誌ごとに,α 係数と再テスト信頼性係数の報告件数を集計した(Table 1)。その結果,どの査読誌においてもα係数の報告件数が高いことが分かる。一方で,再テスト信頼性係数には査読誌間で大きな相違が見られる。再テスト信頼性係数の報告件数が,査読誌ごとの掲載論文数に対する割合で3割を上回ったのは“心理学研究”“教育心理学研究”“パーソナリティ研究”の3誌のみであり,その他の3誌ではほとんど再テスト信頼性係数が報告されていない。また,全体の報告件数のうち,約半数を“パーソナリティ研究”が占めるに至っていた。それぞれの査読誌が対象としうる構成概念や心理的現象の特徴を考慮すれば,上記の結果は,該当尺度が測定しようとする構成概念の性質を反映した結果であると推察される。

 次に,報告されたα 係数の数値が各査読誌でどのような特徴があるのかを明らかにするために,査読誌ごとにα 係数について箱ひげ図にまとめた(Figure 1)。箱ひげ図を概観すると,約75%の尺度(因子)ではα =.70を上回り,約半数はα =.80を上回る数値を示すことが分かる。一方で,一部の尺度(因子)ではα =.40を下回るという,極端に低い数値が報告されている。ただし,尺度の有用性ひいては妥当性が,α係数のみで評価されることはないため,この結果のみで尺度に関する評価を行うことは早計と言える。