The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Presentation information

ポスター発表 PF(65-90)

ポスター発表 PF(65-90)

Sun. Oct 9, 2016 4:00 PM - 6:00 PM 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PF81] 教師の指導文化継承を促進するメカニズムの検討

指導文化認識の高群と低群の比較

井原啓裕1, 牧郁子2 (1.大阪府柏原市立玉手中学校, 2.大阪教育大学)

Keywords:指導文化, 学校経営, 質的研究

問題と目的
 大阪府の教員の年齢構成は20代,50代が多く35歳から45歳までが極端に少ないワイングラス型をしており(大阪府教育委員会,2009),今後熟練者が減少し新規採用が増加することが予想される。また堀(2012)・吉田(2012)は従来職員室での会話を通じて若手教員に伝えられていた教師の指導文化が,協働性の低下により継承不全を起こしている可能性を指摘している。そこで,井原・牧(2015)は教師の指導文化の継承を促進する組織の現状・在り方について検討するため,教師の指導文化尺度(井原・牧,2014)を用いて,尺度の総合得点の平均点高群の学校へのインタビュー調査を実施した。そして収集したインタビューデータは演繹的コ―ディング(佐藤,2008)を用いて分析し,教師の指導文化継承を促進するメカニズムの検討を行った。本研究においては,新たに尺度の総合得点の平均点低群の学校へのインタビュー調査を実施し,収集したインタビューデータを同様に分析し,指導文化継承認識の高群と低群の比較を行うことで指導文化継承を促進するメカニズムの検討することとする。
方   法
【被調査者】大阪府内3市小学校10校(131名)・中学校10校(165名)に調査を実施し回答を得た。その中から教師の指導文化認識尺度総合得点の平均点高群の中学校1校を抽出し,インタビュー調査を実施した。一方低群校は,新たに調査を行い,先の調査における指導文化尺度総合得点の平均より低いことが確認された中学校において,インタビュー調査を実施し回答を得た。
【手続き】被調査者にインフォームドコンセントを実施した上で,日常的な問題意識に基づく学校組織に焦点化した回答を得るため,被調査者に自由に語ってもらう形式をとりながら,同時にこちらの設定した諸項目について聞き取る半構造化面接を実施した。高群校の被調査者は,主幹教諭1名,生徒指導主事1名であった。一方低群校は,主幹教諭1名,生徒会担当教諭1名のミドルリーダー組,教師経験2年目教諭1名,教師経験1年目教諭1名の若手教員組とし,2人1組でインタビュー調査を実施した。質問項目は,分散モデル(露口,2012)と「場」の概念(野中・紺野,1999)に関する項目と,教師の指導文化の継承と関連性が検証された協働性に関する項目(井原・牧,2014)を併せて設定した。
 【質問項目】ミドルリーダー組には,①職員の中で「場」として機能しているのはどこか(物理的・仮想的・心的),②「場」でのミドルリーダーの存在があるか。あるとしたら,そのリーダーは固定されているのか,教員の指導文化の継承につながっているか,③人材育成システムとしての当該校の現状とポイント,に関する質問項目を設定し,述べるよう求めた。一方,若手教員組には①職員の中で「場」として機能しているのはどこか(物理的・仮想的・心的),②「場」でのミドルリーダーの存在があるか。あるとしたら,そのリーダーは固定されているのか,教員の指導文化の継承につながっているか,③人材育成システムとしてどのようなシステムを要求するのか,に関する質問項目を設定し,述べるよう求めた。
結   果
 先行研究の知見に基づき分析的コードを作成し,このコードを用いて高群校ミドルリーダー,低群校ミドルリーダー,低群校若手教員の逐語録に演繹的コーディングを行い分析した。さらに分析的コード内において文書セグメントのコーディングを行い記述的コードを得た。その結果,分析的コードを親ツリー,記述的コードを子ツリーとするツリー構造が構築され,これらを表にまとめ,コード付きセグメント及びコード付きセグメントの整理を行った(Table 1)。
考   察
 本研究の結果から,高群校の校長は方針の提示という統制的な機能を働かせると同時に,教師集団の協働的な相互作用を学校運営において重視していたことが示された。そして具体的な判断や行動について裁量を与えられたミドルリーダーを中心にして教育実践が行われ,ナッレッジマネジメント(野中・紺野,1999)における「場」に近い組織的動きが形成されていた。加えて『教職員全体での役割をこえた協働』が行われている高群の職場では,油布(1999)が協働文化の形成要因と指摘した【相補性】【情報冗長性】が機能していた。こうしたことから高群校においては,協働性の高い教師集団の相互関係性が要因となって集団への帰属意識が高まり,個々の教師が自ら進んで職場学校全体のことを考えるようになったと考えられる。一方低群校ではナッレッジマネジメントにおける「場」の組織的な形成,および【相補性】【情報冗長性】いずれも十分機能していなかった。つまり指導文化高群校と低群校では,分析コード及び記述的コードの質的意味が異なっていることが確認された。