The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PG(01-64)

ポスター発表 PG(01-64)

Mon. Oct 10, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PG02] 父親の育児参加を阻害する要因の検討

親からの被養育経験と父親の有する愛着の影響

南憲治1, 寺見陽子2, 伊藤篤3, 及川裕子#4 (1.京都橘大学, 2.神戸松蔭女子学院大学, 3.神戸大学, 4.日本医療科学大学)

Keywords:父親, 育児参加, 愛着

目   的
 父親の育児参加を阻害している諸要因とそれらの関連性を,父親の成育歴との関係において明らかにすることが本研究の目的である。
方   法
 乳幼児をもつ父親を対象に質問紙調査を行い,父親の実際の育児と自分の母や父との関係,父親の有する愛着の質,父親と妻との夫婦関係,子どもや育児についての思いなどについて5件法で尋ねた。分析対象にしたのは,郵送によって得られた925名の父親からの回答である。
結   果
 まず,「母親との関係」についての25項目と,「父親との関係」についての25項目に因子分析を行い(最尤法,プロマックス回転),最終的に「母親との関係」では第1因子から順に「親和的で優しい母」「過保護で統制的な母」「自由にさせてくれる母」「冷淡な母」の4因子が,「父親との関係」でも,同様に第1因子から順に「親和的で優しい父」「過保護で統制的な父」「自由にさせてくれる父」「冷淡な父」の4つの因子が確認された。また,詫摩・戸田(1988)の愛着尺度(18項目)についても,同様の方法で因子分析を行った。その結果,愛着尺度については第1因子から順に「安定的愛着」「回避的」「アンビバレント」の3因子が,「子どもや育児」に関する21項目においては,順に「育児に対する自信」「子どもが好き」の2因子が抽出された。そして夫婦関係について調べるための6項目に対する評定値を合計した値を「良好な夫婦関係」得点,さらに「入浴」「食事の世話」「着替え」などの実際の育児を調べるための9項目に対する評定値を合計し「育児行動」得点とした。
 父親の育児行動を阻害する諸要因とそれらの関連性を,父親の成育歴との関係において明らかにするために,Amos23を用いて共分散構造分析を行った。そして最終的に図1に示される因果モデルが得られた。モデルの適合度指標をみると(GFI=.963,AGFI=.945,CFI=.970,RMSEA=.039),データとモデルの当てはまりは良好であると考えられる。また,図1に示されるパス係数の値は標準化係数であり,すべての値が統計的に有意であった。
考   察
 図1に示されるように,父親自身の母ならびに父との関係性によって父親の有する愛着の質が規定されることが示唆された。具体的には,母が「過保護で統制的」である場合や,父が「冷淡」であると,その子どもである父親の愛着の質が「回避的」になることが示された。そしてそのような他者との関係が「回避的」な父親の場合,「育児に対する自信」がもちにくく,その結果としてわが子への育児行動に向かわないことが示された。また同時に,他者との関係が「回避的」な父親の場合,「妻との良好な関係」が形成されにくく,そのことが育児参加を阻害する1つの要因になることも示唆された。このように子育て中の父親の育児を規定する諸要因の基礎に,父親自身の両親との関係性があると考えられる。そしてそのような両親との関係性を通して形成される愛着の質が,今度は妻や自分の子どもといった他者との関係に影響を与え,それによって実際の育児参加が規定されていることが推測された。