The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Presentation information

ポスター発表 PG(01-64)

ポスター発表 PG(01-64)

Mon. Oct 10, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PG09] 幼児と児童の協調性の発達と性差

名尾典子1, 登張真稲2, 首藤敏元3, 大山智子4, 田村沙織#5 (1.文教大学, 2.文教大学, 3.埼玉大学, 4.帝京科学大学, 5.あきる野市教育相談所)

Keywords:児童, 幼児, 協調性

問題と目的
 登張他(2015a)は大学生と高校生の調査をもとに,調和志向・協調的問題解決・非協調志向・協力志向の4下位尺度からなる新たな(成人・青年期用)多面的協調性尺度を作成し,その尺度をもとに,協調的問題解決・協力志向・調和同調の3下位尺度からなる,親が評定する児童用多面的協調性尺度を作成した(2015b)。そして,名尾他(2016)において,親の評定による小学生の協調性の発達について検討した。
 本研究では,この「親評定・児童用多面的協調性尺度」を保育園児及び幼稚園児をもつ親にも実施した結果を併せて提示し,親が評定する年少児から小学校6年生までの子どもの協調性の発達と性差について検討する。また,保育園児と幼稚園児とでは協調性の発達に違いがあるのかについても検討する。
方   法
参加者:保育園児・幼稚園児・小学生の親2541名
研究対象:保育園児(3~6才)57名(男子29名,女子28名),幼稚園児(3~6才)268名(男子136名,女子132名),小学生1961名(男子975名,女子986名)
測度:親評定・児童用多面的協調性尺度全15項目(協力志向5項目,協調的問題解決6項目,調和・同調4項目からなる。)各項目について,自分の子どもにどのくらい当てはまるか,「全然当てはまらない」~「よく当てはまる」の5段階で評定を求めた。
結果と考察
 まず,幼児のみのデータについて,保育園児は学年が不明のデータが多かったため,年齢による比較とし,年齢・性別・幼稚園vs保育園を要因とする3要因分散分析を行ったところ,「協力志向」と「協調的問題解決」は性別と年齢の主効果が有意であり,「協調的問題解決」では,幼稚園児と保育園児の比較においての性別との交互作用も有意であった。保育園児では,3才の時点では幼稚園児より協調性の各下位尺度得点は低いが,特に4才女子において大きく伸び,幼稚園児を上回る結果となった。幼稚園児は,成長とともに伸びるが,保育園児と比べて伸び方は緩やかであり,年長児(5・6才)で高まる傾向であった。
 次に,幼児から小学生にかけての協調性の発達について検討するために,幼稚園児と小学生について性別と学年の2要因分散分析を行った結果をTable 1に示した。3下位尺度ともに性別・学年の主効果はそれぞれ有意であったが,交互作用は有意ではなかった。「協力志向」では性別による差が大きく,女子が高かった。「協調的問題解決」では,女子が高く,学年が上になるにつれてさらに高まった。「調和・同調」では,3下位尺度の中では最も緩やかに高まり,女子において特に年齢が上がるにつれ高まりが見られた。
 多重比較においては,「協力志向」では,1年生は6年生より有意に低かった。「協調的問題解決」では,年少児は3~6年生より有意に低く,年中児は6年生より有意に低く,1年生は3~6年生より有意に低く,2年生と3年生は6年生より有意に低かった。「調和・同調」では,年少児は3~6年生より有意に低く,年中児は3年生より有意に低く,2年生は6年生より有意に低かった。
 幼児期は年長児で一旦協調的問題解決が高まるものの,1年生で一旦低くなり(有意差はない),高学年になるにつれて高まることが明らかになった。調和・同調は幼稚園児より小学生の方が高く,小学校での経験で高まることが示唆された。
引用文献
登張他(2015a).日本教育心理学会第57回総会論文集
登張他 (2015b). 日本心理学会第79回大会論文集,991
名尾他(2016).日本発達心理学会第27回大会論文集
(本研究は,科研費補助金(基盤研究C 25380888)の補助を受けた。)