The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PG(01-64)

ポスター発表 PG(01-64)

Mon. Oct 10, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PG11] 青年のほめられた経験が現在に及ぼす影響

非階層クラスター分析による検討

西川大輔 (京都府立南山城支援学校)

Keywords:青年, ほめられた経験, 現在

問題と目的
 教育現場などの経験に基づく,ほめる側の視点に立った効果的なほめ方についての知見は数多くある。しかし,それらの「ほめ」がある一定期間を経た後,ほめられた側にどのように影響しているのかについて検討した研究は少ない。
 そこで,本研究では,青年を研究対象として,幼稚園・保育園時代から高校時代,高校卒業後までのどのようなほめられた経験を想起し,その経験が現在にどのように影響しているのかを探索的に検討することを目的とする。また,探索的な検討を行うにあたって,本研究では,過去のほめられた頻度と青年の現在のコミュニケーション量を取り上げる。
方   法
調査対象者 大学生324名(A大学161名,B大学163名),短期大学生114名(C短期大学),専門学校生118名(D専門学校)
調査時期 2015年10月下旬から同年11月下旬
調査方法 「青年のほめられた経験に関する意識調査」調査票による質問紙調査。質問項目は,予備調査および高崎(2011)を参考に作成され,過去のほめられた経験と現在に関するもの。
倫理的配慮 立命館大学における人を対象とする研究倫理審査を受け,調査時には口頭および書面によるインフォームドコンセントを実施した。
結果と考察
「ほめられ得点」と「コミュニケーション得点」 幼稚園・保育園時代,小学校時代,中学校時代,高校時代のほめられた頻度を聞いた設問の合計得点(「ほめられ得点」)と他者との日頃のコミュニケーション量を聞いた設問の合計得点(「コミュニケーション得点」)を作成した。α係数を算出したところ,「ほめられ得点」でα=.60,「コミュニケーション得点」でα=.66と内的一貫性がほぼ確認された。また,両得点は弱い有意な正の相関(r=.28,p<.001)を示した。
非階層クラスター分析 上記の両得点を用いた非階層クラスター分析で3群が抽出された。3群を独立変数,両得点を従属変数とした一要因分散分析を行った(「ほめられ得点」(F(2,553)=280.74,p<.001),「コミュニケーション得点」(F(2,553)=430.69,p<.001)。多重比較の結果より,第1クラスターは,両得点が低い「ほめ低コミュ低群」,第2クラスターは両得点が高い「ほめ高コミュ高群」,第3クラスターは「ほめられ得点」は高いが,「コミュニケーション得点」が低い「ほめ高コミュ低群」とした(Figure 1)。3群と各設問とのクロス集計およびχ2検定を実施し,残差分析を行ったところ,「ほめ高コミュ高群」はアルバイトや部活動をしている人が有意に多く,主観的な学業成績,運動能力,友だち量,「一番印象に残っている」ほめられた経験を思い出す頻度のいずれも高群に有意に多くみられた。一方で,「ほめ低コミュ低群」は対照的な結果となった。過去にほめられることが多いと自己肯定感や自尊感情が育まれ,青年の活動性,社交性,ほめられた経験の想起頻度に影響を及ぼす可能性が示唆された。
引用文献
高崎文子(2011).「ほめ」に効果がない状況の要因分析―ほめられる側に焦点をあてた分析か ら― ソーシャル・モチベーション研究,6,1-14.