The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PG(01-64)

ポスター発表 PG(01-64)

Mon. Oct 10, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PG29] 多肢選択テストが記憶のテスト効果に与える影響

選択肢数と項目間の類似性による検討

長大介 (法政大学大学院)

Keywords:テスト効果, 多肢選択テスト, 類似性

問題と目的
 テストにはいくつかの役割があり,その1つが検索した項目の符号化である(村山,2006)。このテストによる符号化はテスト効果と呼ばれている(Roediger & Karpicke, 2006)。テスト効果の生起に与える変数としてテスト形式が挙げられる。特に自由再生テストを用いた場合,最終テストの成績に関わらず良い記憶成績を生みだした。この結果は認知資源の1つである検索努力(retrieval effort)を用いることで説明された。つまり,再認テストに比べて再生テストにはより多くの検索努力が費やされたため,より強いテスト効果が生じたといえる。
 本研究では検索努力に注目し,多肢選択テストの選択肢数および学習項目と新項目の類似性を操作することで,テスト効果に対する検索努力の影響を検討する。
方   法
 実験参加者 都内の大学に通う大学生26名が参加した。
 実験デザイン テスト時の項目間の類似性2(類似,非類似:参加者間)×再学習/初期テスト4(再学習,二肢選択テスト,三肢選択テスト,四肢選択テスト:参加者内)からなる2要因混合計画とした。従属変数は初期テストでの正答率および最終テストでの自由再生率とした。
 実験刺激 本研究では天野・近藤(2003)から文字親密度が中程度以上(4.0以上)のカタカナ3文字の項目(e.g., タンク)を32項目抜粋し,学習項目であるターゲットリストとした。さらに初期テストでの妨害項目としてターゲット項目と1文字目と2文字目,もしくは2文字目と3文字目の文字が重複している項目をターゲット項目1つにつき3項目,合計96項目を抜粋し,類似リストとした。また,ターゲット項目と重複する文字を含まない項目をターゲット項目1つにつき3項目,合計96項目を抜粋し,非類似リストした。さらにそれぞれのリストに含まれる項目を3つのサブリストに分割し,再学習/初期テスト要因に含まれる条件ごとに割り振った。また,初頭効果と新近効果用のバッファ項目をそれぞれ2項目,合計で4項目を使用した。
 手続き 実験は学習段階,再学習/初期テスト段階,最終テスト段階の順番で実施した。学習段階では36項目(32項目がターゲット項目)を使用し,後でテストを行うために呈示された項目をできるだけたくさん覚えることを求めた。再学習/初期テスト段階ではターゲット項目をもう一度学習する再学習試行とターゲット項目に対する多肢選択テストを行う初期テスト試行をランダムに行った。最終テスト段階は再学習/初期テスト段階から2日後に実施した。実験参加者には学習段階で呈示されたターゲット項目をできる限り思い出し,記録用紙に書き出す自由再生テストを求めた。最終テスト後,デブリーフィングを行った。
結   果
 実験参加に同意した26名のうち学習中に実験室外の騒音が気になった,別のことを考えていたと内観で報告した2名を除いた24名を用いて最終テスト時の自由再生率をFig. 1に示す。
 2要因分散分析の結果,主効果および交互作用はいずれも有意ではなかった(Fs < 1)。本研究では選択肢数及び類似性の影響を検討することを目的としているため,再学習条件を除いて分析を行った。その結果,交互作用に有意傾向が見られた(F (2,44)=2.48, p =.09)。有意傾向だが,選択肢数及び類似性の影響を詳細に検討するため下位検定を行った。その結果,四肢選択テスト条件において類似性要因の単純主効果が有意傾向だった(類似 < 非類似)。
考   察
 本研究では学習に対するテストの優位性であるテスト効果は得られなかったが,類似性の影響は選択肢数によって異なる可能性が示された。今後は検索努力を測定することで,選択肢との関係を明らかにしていく必要がある。