The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PG(01-64)

ポスター発表 PG(01-64)

Mon. Oct 10, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PG45] 中国人日本語学習者における日中同形二字熟語の認知処理過程

日本語習熟度の違いが形態・音韻処理の過程に与える影響

李岩1, 兵藤宗吉2 (1.中央大学, 2.中央大学)

Keywords:異なる日本語習熟度, 形態・音韻処理過程, 日中同形語

問題と目的
 日本語漢字単語を認知処理する場合は音韻情報が意味を知る手がかりとなるとは限らず,そのために形態情報への依存度はかなり高く,音韻情報への依存度は低いとする。その一方,中国語の漢字単語は音韻情報も意味を知る重要な手がかりとなる。つまり,中国語漢字の形態情報への依存度は日本語漢字より弱く,音韻情報への依存度は日本語漢字より強く考えられる。また,日本語を第二言語とする中国語母語者の日本語習熟度の違いが漢字単語の認知処理過程への影響も存在し,習熟度高いほど,日本語母語者の漢字単語認知処理過程に接近すると考える。本研究では,日本語習熟度の違いが中国人日本語第二言語学習者(筑波日本語テスト集(TTBJ)の一部項目を拝借した)の日中同形二字熟語の形態・音韻処理過程に与える影響及びその変化について検討しない。
方   法
「参加者」日本語を第二言語とする中国語母語者20名(男性8人,女性12人,M=23.55 SD=2.81)
「計画」2(習熟度:上級前半,上級後半)✕2(熟語特性:同音,形態類似)の2要因間・内混合計画。
「刺激」正し綴りの二字熟語:40語(“正当”Yes反応);同音の非言語:20語(“次率”No反応);形態類似の非言語:20語(“遣物”No反応)
「手続き」1.語彙判断課題(6分):本実験は,語彙判断課題を用いた。パソコン画面の中央に刺激が出てくる合図として注視点が1000ms呈示される。注視点が呈示された直後に,刺激単語を呈示する。実験参加者は,刺激単語は日本語として存在するかどうかをできるだけ速く正確に判断し,あらかじめ教えられたyesまたはnoキーを押すように教示される。刺激単語が呈示されてから実験参加者がキーを押すまでの時間が反応時間として
パソコンによって自動計測される。本試行が行われる前に,練習試行として5試行が行われる。2.習熟度確認テスト段階(6分):TTBJ(筑波日本語テスト集)を使用し(漢字SPOT50のみ,満点は50)実験参加者の現段階の日本語能力を測定する。3.実験後インタビュー段階(5分):基本情報及び実験に関する情報。
結果と考察
 3名(外れ値)と2名(基準点)のデータを除外し,15名のデータを分析した。
 誤答率について2要因分散分析した結果,習熟度(F(1.13)=5.253,p <.10),熟語特性(F(1.13)=5.2,p <.10)の主効果が見られた。上級後半条件は上級前半条件より,エラー率は有意に少なり,形態類似条件は同音条件より,エラー率は有意に多いことが分かった。
 反応時間において,2要因分散分析した結果,習熟度の主効果(F(1.13)=2.732,p =0.12)が見られなかったか,熟語特性の主効果(F(1.13)=2.732,p <.005)及び交互作用(F(1.13)=2.732,p <.05)が見られた。形態類似条件は同音条件より,反応時間が長いことが分かった。交互作用見られたため,単純主効果検定を行った結果,習熟度においでは,形態類似条件は同音条件より反応時間が長かった。熟語特性においでは,上級前半条件は上級後半条件より反応時間が長かった。
 本研究の中,データ数は少ないため,習熟度は実際に分けていない,今後は参加者は増えるべきと考えられる。また,刺激語の作成条件及び難易度(変化する文字数)は違いがあったため,直接比較できなく,どちらがより強い影響を受けるとは言えない,難易度は統制する必要があると考えられる。さらに,上級前半条件は上級後半条件よりエラー率が多く,反応時間が長かったか,単純に日本語に関する知識の差が存在するとも考えられ,今後は日本語母語者との比較研究及び妨害課題の投入は必要と考えられる。