The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PG(01-64)

ポスター発表 PG(01-64)

Mon. Oct 10, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PG53] 児童生徒の「みんなとなかよく」の意識と発達の検討

理由尺度の開発

高橋智子1, 庄司一子2 (1.筑波大学大学院, 2.筑波大学)

Keywords:「みんなとなかよく」, 発達, 対人関係

問題と目的
 日本には「みんな友だち」という建前があり,友人を持つことは良いことで,それが精神的健康の証だとされ,そうするように社会的な圧力がかかることが指摘される(高橋,2013)。こうした指摘は,教育現場や子育てで多用される「みんなとなかよく」という言葉にも,同様にあてはまると考えられるが,これについてこれまで実証的な検討はなされてこなかった。そこで,本研究では,なぜ児童生徒が「みんなとなかよく」しなければならないと思うかについて,尺度を作成することを目的とする。なお,尺度の妥当性を検討するために,友人に関する対人関係ビリーフ尺度との関連を検討する。
方   法
項目の作成:首都圏の中学生90名,大学生・大学院生76名に「みんなとなかよく」しなければならないと思う理由について自由記述により回答を求めた。得られた回答をKJ法によって分類し,教育学を専攻する大学院生5名により,内容的妥当性の検討を行った。落合・佐藤(1996)の「友達とのつきあい方に関する尺度」のから全方向的因子の5項目を加え,25項目からなる尺度を作成した。
調査対象と調査時期:首都圏公立小中学校6校に通う児童生徒822名(小学生442名,中学生380名,男子410名,女子409名,不明2名)を対象に,2015年11月に実施した。
調査内容:「みんなとなかよく」しなければならないと思う理由尺度25項目(4件法)および中学生の友人に関する対人関係ビリーフ尺度(本田・石隈・新井,2005)6項目(4件法)を用いた。
結果と考察
因子分析:項目間相関が.70以上である項目2項 目を削除し,残り23項目について因子分析(最尤法・プロマックス回転)を行った。2因子以上に高い負荷を示す項目を削除する作業を繰り返し,19項目について因子分析(最尤法・プロマックス回転)を実施した結果,最終的に4因子が抽出された。第Ⅰ因子を「孤立嫌われ不安」,第Ⅱ因子を「関係志向」,第Ⅲ因子を「衝突回避」,第Ⅳ因子を「環境からの影響」と命名した(Table 1)。
信頼性の検討:下位尺度について,クロンバックのα係数を求めた。その結果,第Ⅰ因子はα=.87,第Ⅱ因子はα=.84,第Ⅲ因子はα=.87,第Ⅳ因子はα=.75であり,ある程度の内的整合性が認められると判断された。
妥当性の検討:各下位尺度と,対人関係ビリーフ尺度の下位尺度の「関係向上」「関係維持」との相関係数を算出した結果,第Ⅰ因子はr=.56,r=.23,第Ⅱ因子はr=.32,r=.57,第Ⅲ因子はr=.31,r=.27,第Ⅳ因子はr=.37,r=.19であり,全てp<.01であった。以上から,「「みんなとなかよく」しなければならないと思う理由」尺度には一定の妥当性が認められると判断された。
学年差と性差の検討:学年,性別を独立変数とする二要因分散分析を行った。交互作用が有意ではなかったため主効果を検討した結果,性別においては有意な差がみられなかった。学年の主効果は,「孤立嫌われ不安」(F(4, 639)=5.76,p<.05),「環境からの影響」(F(4, 632)=5.26,p<.05)で,小学校5年生が中学校1年生より有意に高く,「関係志向」(F(4, 635)=2.63,p<.05),「衝突回避」(F(4, 642)=2.94,p<.05)では,小学校5年生が中学校3年生より有意に高かった。
 この結果から,小学5年生が他の学年より,どの下位尺度に対しても,強く意識している傾向が見られ,学年が上がるにつれて理由が変化することが明らかとなった。