The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PG(01-64)

ポスター発表 PG(01-64)

Mon. Oct 10, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PG64] セルフ・コンパッションがウェルビーイングに及ぼす影響

コーピングを媒介して

水野雅之1, 菅原大地#2, 千島雄太3 (1.国立精神・神経医療研究センター, 2.筑波大学大学院・日本学術振興会, 3.筑波大学)

Keywords:セルフ・コンパッション, コーピング, ウェルビーイング

問題と目的
 近年,セルフ・コンパッション(self-compassion)に注目が集まっている。セルフ・コンパッションとは,自己への思いやりによって自身の苦しみを和らげ癒すことや,自身の至らない点を人類に共通して見られる経験として批判せずに捉えることを指し(Neff, 2003),これまで精神的健康との関連が数多く示されてきた(Zessin et al., 2015)。
 セルフ・コンパッションは一貫して精神的適応に良好な影響を及ぼすことが明らかにされつつあるが,なぜセルフ・コンパッションはこのような影響を持つのであろうか。その説明として,Allen & Leary(2010)はセルフ・コンパッションが,良好なコーピング方略を導く特性として働くことを指摘している。セルフ・コンパッションとコーピングの関連に関する先行研究では,セルフ・コンパッションは良好なコーピング方略を導き,不適切なコーピング方略を抑制することが示されている(Allen & Leary, 2010; Sirois et al., 2015)。
 ところで,セルフ・コンパッションの類似概念には自尊感情があり,これまでセルフ・コンパッションと自尊感情が適応に及ぼす影響が異なることが示されてきた。すなわち,自尊感情との関連を踏まえながら,セルフ・コンパッションとコーピングの関連を検討することによって,Allen & Leary(2010)やSirois et al.(2015)などの先行研究では見出されなかった新たな知見を示すことが可能となると考えられる。そこで,本研究ではセルフ・コンパッションと自尊感情がコーピングを介してウェルビーイングに及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。
方   法
調査対象者 関東圏の大学3校の大学生247名(平均年齢=19.37 歳,SD=1.12)。
調査内容 (a)セルフ・コンパッション反応尺度(宮川・谷口, 2016),(b)自尊感情尺度(山本ら, 1982),(c)TAC-24(神村ら, 1995),(d)WHO-5精神健康状態表簡易版(稲垣ら, 2013)。
結果と考察
 セルフ・コンパッションと自尊感情が,コーピングを媒介してウェルビーイングに及ぼす影響を検討するために,共分散構造分析を実施した。検討したモデルでは,有意ではないパスを削除しながら分析を行い,最終的にFigure 1のモデルが得られた。このモデルの適合度はGFI=.97,AGFI=.91,CFI=.96,RMSEA=.08であり,おおむねデータに適合したモデルであるといえる。
 次にセルフ・コンパッションのウェルビーイングに及ぼす間接効果の有意性を検討するため,ブートストラップ法(ブートストラップ標本数5000)による媒介分析を実施した。その結果,間接効果は.18(95%Cl=[.11, .26], p<.01)であった。
 本研究の結果,コーピングを媒介した際にも,自尊感情とセルフ・コンパッションがそれぞれ異なる作用機序を持つことが示されたといえる。