The 29th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター

認定医審査ポスター

認定医審査ポスター

Fri. Jun 22, 2018 9:50 AM - 4:50 PM ポスター会場 (7F イベントホール)

[認定P-02] 顔面神経麻痺患者における総義歯製作の1例

○手島 渉1 (1. 公立みつぎ総合病院)

【目的】
 末梢性顔面神経麻痺が長期にわたると,顎顔面の機能や形態に左右差が現れやすく,義歯治療が困難となる場合がある。今回,治療用義歯を利用して最適な義歯形態を模索し,その後,複製義歯を応用して上下総義歯新製を行うことで良好な帰結が得られたので,その概要を報告する。
【症例と処置】
 79歳女性,義歯の不調を主訴に来院。2006年右側聴神経腫瘍に対してガンマナイフ術後より右側末梢性顔面神経麻痺を生じ,右側聴覚障害ならびに右側顔面神経支配領域の随意運動障害が残存した。2012年頃より義歯使用が困難となり,他院にて総義歯治療を受けるも奏功せず,2016年2月に当院を受診された。顔貌は左右非対称,右口角閉口不全を認めた。開閉口路は一定せず,下顎安静位も不安定であった。上顎顎堤はほぼ左右対称であったが,下顎顎堤の麻痺側は筋弛緩し、顎堤も平坦であった一方,健側の顎堤は筋緊張のため凸状に狭小化されていた。また,上下顎ともに多数の義歯性口内炎を認めた。
 通法に従って治療用義歯を製作,義歯床形態や咬合高径などを随時修正しながら咀嚼練習を行った。6ヵ月後,義歯の安定が図れるようになったため,治療用義歯を複製して新義歯を製作した。その際,歯列部分にパラフィンワックス,義歯床部分に即時重合レジンを用いた複製義歯(以下,複製ろう義歯)を用いて咬座印象を行い,新義歯を完成させた。
【結果と考察】
 初診時には,お粥や豆腐のような軟食を摂取していたが,治療用義歯で普通食摂取可能となり,新義歯では,煎餅や豆のような硬固物も咀嚼可能となった。複製ろう義歯は,治療用義歯とほぼ同形の新義歯を提供できる利点があり,その結果,順応も速やかで満足のいく治療結果が得られた。