一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター

2018年6月22日(金) 09:50 〜 16:50 ポスター会場 (7F イベントホール)

[認定P-29] 重度開口障害と咬舌により穿孔にまで至った医科入院患者に対して歯科的介入を行い回復した1症例

○松原 麻梨子1,2 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科老化制御学口腔老化制御学講座高齢者歯科学分野、2. 医療法人社団成仁会市ヶ尾カリヨン病院歯科口腔外科)

【緒言】
 超高齢化社会を迎えるにあたり,医科のみならず歯科での適切な口腔管理を実施することで全身状態の回復へとつなげることが期待されている。今回,医科入院患者に歯科が介入し,比較的早期に全身状態が回復し退院が可能となった症例を報告する。
【症例の状況及び診断】
 86歳女性。当院内科に発熱を主訴に肺炎のため入院。入院時SpO285%であり,内科にて酸素投与・抗生剤の点滴がなされていた。口腔所見として重度開口障害,右上123右下123咬合部は咬傷により3~4歯分の穿孔が認められた。舌突出部に関しては重度の腫脹があり口唇より3cm程度突出。舌に潰瘍病変なく異常出血はなかった。入院前に某大学病院にて舌の生検をしており結果待ちの状態であった。
【処置と経過】
 開口器にて開口させ,咬舌を解消し口腔内に整復した。舌突出部は重度の腫脹があり口腔内に戻すと気道閉塞の恐れがあったため整復後,嚥下内視鏡にて影響がないかを確認した。整復後,呼吸状態が改善し,酸素投与が不要となった。その後,咬傷になりうる原因の歯を削合,抜歯。裂傷部感染・肺炎予防に対して口腔清掃,嚥下機能回復のために間接訓練を励行した。舌の腫脹は次第に軽減され,穿孔部に関しては整復後40日後にして完全に自然癒着した。覚醒状態も回復し整復後5日目に追視,44日後に発声可能となり退院となった。
【考察】
 歯科介入により全身状態の回復が比較的早期に得られた。また嚥下内視鏡を活用し嚥下機能・気道閉塞や異常出血の有無等を確認した上で舌を整復したため,整復後の安全性が確保できた。また,口腔清掃・摂食機能療法等により唾液の気管流入を防ぎ,気道浄化に努めたことが全身状態への回復へとつながったと思われた。