The 29th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター

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Fri. Jun 22, 2018 9:50 AM - 4:50 PM ポスター会場 (7F イベントホール)

[認定P-34] 多系統萎縮症による嚥下障害に対し在宅にて食支援を行った症例

○藤井 菜美1 (1. 大阪大学歯学部附属病院顎口腔機能治療部)

【症例】
 65男性。2009年に多系統萎縮症の診断。2013年4月に食事でのむせを生じ始め,訪問STより紹介され初診となった。
【診断と指導内容】
 ADLは歩行器で室内を移動できる程度で,食事は端座位で自食可能、明瞭度は低下していたものの会話で意思疎通は可能であった。嚥下内視鏡検査にて,安静時に唾液誤嚥を認めたものの,軟飯・煮物の食塊形成はほぼ良好で,食事も水分も誤嚥は認めなかった。発熱など肺炎を示唆する所見を認めなかったため,食事内容は変更せず,一口量を調整し,むせが増加した際には水分にとろみを付与するように指示した。併せて,歯科衛生士に週に1度の口腔ケア・間接訓練・食形態の調整を指示した。
【経過】
 胃瘻や気管切開は希望せず自宅で過ごしたいという本人の希望に沿い,診療を進めた。食べやすい,食べにくいなどの患者の意見を参考にしつつ,同時に客観的な所見として,嚥下内視鏡所見や発熱や痰の増加などの全身状態を踏まえ,食形態の調整を行った。呼吸訓練などの間接訓練を実施していたものの,ADLと共に嚥下機能は徐々に低下し,数カ月後に水分にとろみが必要となり,食事についてもお粥や刻み食,栄養剤や高カロリープリンを利用するようになった。食形態の調整の際は,肺炎や窒息のリスクを本人・家族に納得してもらえるように心掛けた。初診から肺炎を起こさず経過していたが1年経過頃に肺炎で入院し,その直後に豆腐で窒息し胃瘻となった。自宅に戻った1カ月後に心停止で逝去された。
【考察】
 多系統萎縮症の嚥下機能の低下は,訓練で抗えるものではなかった。歯科で行えることは,在宅に訪問し患者の機能と希望に寄り添い,食支援を行うことであったと思われた。