一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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認定医審査ポスター3

2023年6月16日(金) 12:00 〜 13:30 ポスター会場 (1階 G3)

[認定P-13] パーキンソニズムによる口腔期の摂食嚥下機能障害の高齢者に対して摂食嚥下リハビリテーションを行った症例

○尾池 麻未1、柏﨑 晴彦2 (1. 九州大学大学院歯学研究院 総合歯科学講座 総合診療歯科学分野、2. 九州大学大学院歯学研究院 口腔顎顔面病態学講座 高齢者歯科学・全身管理歯科学分野)

【緒言・目的】
 パーキンソニズムは高齢者ほど増加する傾向にあり,臨床においては嚥下障害も大きな問題となっている。今回我々は,くも膜下出血後遺症の水頭症に対するシャント術後のオーバードレナージによる中脳下垂によって生じたパーキンソニズムによる口腔期の摂食嚥下機能障害の高齢者に対して,経口摂取改善を目的とした摂食嚥下リハビリテーションを行った一例を経験したので報告する。

【症例および経過】
 65歳,女性。既往歴:#1くも膜下出血 #2水頭症 #3高血圧症
 現病歴:2021年4月中旬頃から固形物の飲み込みにくさを自覚した。その後症状は増悪し水分摂取も困難となり,パーキンソニズム及び口舌嚥下失行と診断され,6月2日に当院脳神経内科に入院となった。舌の異常緊張によって食塊を口腔から咽頭に移送することが困難となっており,口腔期における評価や対応が歯科に求められ,6月10日当科初診となった。口腔機能検査の結果,口腔周囲の巧緻性は維持されているものの,舌可動域は重度に制限されていた。 6月14日よりゼリー摂取直接訓練を行った。22日にパーキンソニズムによる認知障害が起こり直接訓練を実施できなくなったため,その日は間接訓練を行った。その後症状は改善し,30日には昼のみ嚥下調整食3を開始することができた。しかし7月2日にレボドパ過剰投与による不随意運動及び嚥下失行が悪化し,再度ゼリー訓練に変更した。12日には再度昼のみ嚥下食を開始することができ,6割ほど摂取できた。30日に行った口腔機能検査では咀嚼嚥下機能の大幅な上昇を認めた。8月2日に転院となるまで直接訓練を継続し,最終的に3食嚥下食を摂取できるようになった。現在は転院先を退院され,自宅にて普通食を摂取されている。
 なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。

【考察】
 医科歯科連携による適切な早期介入を行うことによってリハの効果が顕著にあらわれ,患者のQOLの改善に貢献できた症例であった。パーキンソニズムは時間帯や服薬によって病態が変わりやすい疾患であるため,摂食嚥下リハも柔軟な対応が求められる。悪化した場合は訓練方法をワンステップ戻るなど,画一的ではなく患者に寄り添った医療を提供することで,水分摂取も困難だった本症例が普通食を摂取できるまで改善し,在宅に戻ることができた。

(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)