The 34th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター7

Fri. Jun 16, 2023 12:00 PM - 1:30 PM ポスター会場 (1階 G3)

[認定P-39] 既往に複数回の脳梗塞があり高次脳機能障害を認める高齢患者に対して継続的に経口摂取支援した症例

○吉澤 彰1、中川 量晴1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【緒言・目的】
 加齢に伴う心機能の低下や高血圧や血管の狭窄化は,脳血管障害の要因となり,脳血管障害は高次脳機能障害の一因となりうる。今回,繰り返し脳梗塞を起こした高齢患者に対し,継続的に経口摂取支援をした症例に関して報告する。
【症例および経過】
 患者は86歳女性,20XX 年5月に急性心不全による入院中に胃瘻造設術を受け,かかりつけ医師により禁食の方針となっていた。20XX+1年6月,家族より経口摂取を再開させたいと依頼があり,介入を開始した。
 初診時,右上肢の麻痺を認め,発語はほぼ認めなかった。残存歯は上下顎28本あり,挺舌は不可だった。既往歴は,陳旧性脳梗塞(80から84歳の間に3回),慢性心不全,肺炎,胆管炎,腎盂腎炎,逆流性食道炎,糖尿病があった。嚥下内視鏡検査(以下VE)より,食物を口腔内に溜め込み,口からこぼしてしまうが,明らかな誤嚥所見はなかった(DSS=5)ため,直接訓練を始める方針とした。直接訓練開始時は嗜好品で特にため込みが少なく,嚥下惹起を確認できた。また,喀出機能を維持するため,間接訓練は呼吸器のリハビリを指導した。患者は施設に入居されており,歯科衛生士が週2回介入できたため,訓練を依頼した。定期的にVEを行い,肺炎兆候がないことを確認しつつ,直接訓練開始から4か月後に1食分の経口摂取をすることが出来た。その後,同年11月にイレウス疑いのため入院した。退院後の同年12月に再評価したが,以前より咽頭残留量が増加していた。そのため,直接訓練より再開したが,徐々に嚥下機能の改善を認めた。その後,20XX+2年3月には,2食経口摂取が可能となった。
 なお,本報告の発表について患者家族から文書による同意を得ている。
【考察】
 本症例の先行期障害は,慢性心不全や高血圧がリスクファクターになったと考えられる脳梗塞に起因する高次脳機能障害の一部の所見と推測された。医学的に,高次脳機能障害は連合野皮質の障害による症状とされ非進行性の疾患と考えられるが,高齢者では加齢に伴い大脳皮質の萎縮は進行する。よって,本症例では高次脳機能障害に対するリハビリよりも,呼吸・喀出機能や肺炎を起こさず安全に繰り返し咀嚼嚥下させる点に重点を置いた。結果として口からの食べこぼしなど高次脳機能と関連すると思われる先行期障害は,部分的な改善をみた。

(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)