The 34th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師審査ポスター

Fri. Jun 16, 2023 2:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (1階 G3)

[摂食審査P-1] COVID-19ワクチン接種後に生じたギラン・バレー症候群の経口摂取再開の一例

○奥村 拓真1,2 (1. 北斗病院 歯科口腔外科、2. 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【緒言】
ギラン・バレー症候群(以下GBS)はCOVID-19ワクチン接種後にも発症することが報告されているが,その慢性期における経口摂取支援の報告はほとんどない。今回在宅療養中のGBSの患者で,経口摂取再開が可能となった一例を経験したので報告する。
【症例および経過】
85歳男性。既往歴は高血圧症,左脳梗塞(2016年)。2021年X月(第1病日)に転倒後起き上がれず,搬送され入院となった。患者は入院3日前にCOVID-19ワクチン2回目を接種していた。第10病日にGBSの診断となった。第28病日頃には症状のピークを認めたが,気管切開や人工呼吸器等の導入はされずに経過した。経口摂取困難のため第163病日には胃瘻が造設された。近医診療所に転院後,第196病日に自宅退院となった。飲み込みの機能を見てほしいとの主訴で,第208病日に歯科訪問診療初診となった。四肢麻痺あり,要介護5,Hughesの機能グレード尺度(以下FG)は4,握力は10㎏程度,Body Mass Index(以下BMI)は18.6 kg/m2であった。口腔内はEichner分類A3,舌圧は平均5.4kPaであった。嚥下内視鏡検査を実施し,喉頭挙上不良,嚥下反射惹起遅延を認めた。GBSによる嚥下機能低下と診断,四肢麻痺も改善しておらず,今後の大幅な機能改善は見られないと判断した。姿勢代償で誤嚥なく直接訓練開始可能なことを確認し,リクライニング45°で中間のとろみ水を用いた直接訓練を週1回から開始した。併せて離床を促すとともに開口訓練などを家族に指導した。第368病日には週2回のみ1日1食で食事を開始することができた。2023年1月現在誤嚥性肺炎の発症なく経口摂取を継続できている。なお,本報告の発表について患者本人および家族から文書による同意を得ている。
【考察】
COVID-19ワクチン接種後のGBSとして特殊な経過はなかった。しかし社会情勢もあり回復期リハビリテーション病院に転院せず,在宅療養となっていた症例であった。摂食機能療法に携わる者として今後このような症例に遭遇する頻度は増えるかもしれないことを意識すべきである。ADLやQOLを継続的に観察し,適切にリハビリテーション介入を続けることで経口摂取を開始でき,患者や患者家族のQOL向上に結びつけることができたと考える。 (COI 開示:なし)(倫理審査対象外)