The 34th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師審査ポスター

Fri. Jun 16, 2023 2:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (1階 G3)

[摂食審査P-7] 脳神経難病が疑われる重度構音及び嚥下障害の症例

○岡澤 仁志1 (1. 明海大学歯学部機能保存回復学講座摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【緒言】
義歯に起因する咀嚼,嚥下障害及び構音障害を主訴に来院し、神経難病を疑い医科歯科連携を行った 1例について報告する。本報告の発表は患者本人から文書による同意を得ている。
【症例および経過】
73 歳,女性。高血圧の既往があり,アムロジピンを内服。9 年前の義歯新製から構音障害を認め,義歯調整を行うも改善が見られなかった。1年半前より構音障害が顕著に悪化し,当院補綴科を受診したが、義歯に問題は認めず当科に紹介された。初診時外部評価は身長 153 ㎝、体重 47kg(8 か月前 52 ㎏),BMI19 [kg/m 2 ],JCS-0であった。日常生活自立度ランクJ,上下顎全部床義歯を使用し,吸着や咬合は良好。挺舌は赤唇部を超え、左右運動や挙上は著しく制限を認め,動作も緩慢であった。重度の運動性構音障害を認め,発話明瞭度の尺度は 3.5,舌圧は平均 2.5kPa,音節交互反復運動は平均 2.5∼2.8 回/秒,咀嚼能率検査は44 ㎎/dl であった。嚥下内視鏡検査で UDF「かまなくてよい」では,移送困難を認め,平時行っている食物を奥舌に留置し咽頭流入させる方法で検査を行ったところ兵頭スコアは4 点であった。上記より加齢変化では説明のつかない所見を認め,神経難病を疑い脳神経外科の受診を提案。検査入院が決まった。食事・栄養指導にて体重減少抑制を図ったが,44 ㎏まで減少した。当院管理栄養士より 1600kcal 摂取提案で体重は安定した。入院前に応急的に PAP化(舌接触補助床)を行い,構音と舌圧がわずかに改善した。1 か月の入院検査により ALSと判明。現状準備~口腔期の問題のみであるが,すでに食事が負担となり,経口摂取は当分継続の上胃瘻造設を助言したところ,主治医からも提案があった。退院後義歯の PAP部分の調整を行ったが舌尖が挙上せず,十分に機能しないことや鼻漏も認めることから,摂食嚥下用の咬合高径を低下させた PAP,PL(軟口蓋挙上装置)義歯作製を開始。病因から積極的な機能訓練は適応外の為,長期目標は経口摂取の維持とし,栄養 指導及び think swallow 等代償を提案。
【考察】
本症例のように摂食嚥下障害の原因があるものの,患者および家族が,受診先を選択できなかったために医療を受けられず,症状が進行した可能性がある。歯科医師 は、全身疾患を把握あるいは疑う機会が多い職種でもあると考えられる。
COI 開示なし,倫理審査対象外