The 34th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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優秀ポスターコンペティション

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優秀ポスター賞コンペティション
歯科衛生士部門

Fri. Jun 16, 2023 5:00 PM - 6:00 PM ポスター会場 (1階 G3)

[優秀P衛生-3] 延髄外側症候群患者に対しシームレスな連携と継続的リハビリテーションにより常食が摂取可能となった症例

○荒屋 千明1、中尾 幸恵2,1、蛭牟田 誠2,1、浅井 ひの4、木村 菜摘3、谷口 裕重2 (1. 医療法人社団登豊会 近石病院歯科・口腔外科、2. 朝日大学歯学部摂食嚥下リハビリテーション学分野、3. 朝日大学病院 歯科衛生部、4. 医療法人社団登豊会 近石病院栄養科)

【目的】
延髄外側症候群は重度の嚥下機能障害を呈し,後遺症が残りやすいため,早期の介入と継続した摂食嚥下リハビリテーションが重要となる。しかしながら,急性期病院から在宅医療への連携が不十分なため,介入が途絶えてしまい,誤嚥性肺炎による入院を繰り返す事例も少なくない。今回,施設間での連携を図り,歯科衛生士(DH)が中心となって摂食嚥下リハビリテーションを継続することで,3食常食摂取が可能となった1例を報告する。 
【症例および経過】
74歳,男性。X年8月,左延髄外側梗塞を発症。右ラクナ梗塞の既往あり。病院にて,喉頭閉鎖不全と左側食道入口部の開大不全を認めた。多職種でのバルーン訓練や間接訓練を継続し,退院時には,全粥・刻みとろみ食,液体薄いとろみを頭頸部左回旋位で摂取出来るまでになったが,肺炎予防のためには継続した指導および訓練が必要であった。同年12月,歯科訪問診療の依頼があったため,DHが中心となり連携シートを用いて病院と訪問歯科が入念な情報共有をした。訪問初診時,湿性嗄声や食事中のムセが慢性的にあり,誤嚥性肺炎発症のリスクが高いと考えられた。そのため,間接訓練として息こらえ訓練,嚥下おでこ体操,咳嗽訓練を継続し,食事面では頭頸部左回旋位での摂取および食事前のバルーン訓練を継続するよう指導した。定期的に病院での嚥下造影検査および訪問での嚥下内視鏡検査を行い,本人へのフィードバックと肺炎の注意喚起をすることで自主訓練の継続を指導した。その結果,喉頭閉鎖不全が改善され,食道入口部も徐々に開大したため3食常食の自己摂取が可能となった。また,息こらえ嚥下であればとろみなしの水分摂取が可能となり,現在に至るまで,誤嚥性肺炎は発症していない。なお,今回の発表に際し患者本人より同意を得ている。
【考察】
病院と訪問歯科が十分な情報共有を行い,シームレスな連携をすることで,効率的かつ質の高い摂食嚥下リハビリテーションが継続出来たと考えられる。その結果,本症例は重度の延髄外側症候群であったにも関わらず,誤嚥性肺炎を発症せず常食の経口摂取に至った。病院から退院後の施設への連携を図り,介入が途絶えることのない体制づくりを行うことが,摂食嚥下リハビリテーションにおいて重要であることが示唆された。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)