The 34th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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優秀ポスターコンペティション

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優秀ポスター賞コンペティション
歯科衛生士部門

Fri. Jun 16, 2023 5:00 PM - 6:00 PM ポスター会場 (1階 G3)

[優秀P衛生-5] 食道癌術後から数年後に嚥下機能低下し,摂食機能療法を行い経口摂取再開に至った一例

○溝江 千花1、梅田 愛里1、岩下 由樹1、道津 友里子1,2、梅本 丈二1 (1. 福岡大学病院摂食嚥下センター、2. 高良台リハビリテーション病院)

【緒言・目的】
食道癌術後,長期間の挿管の影響で嚥下機能の低下が認められることがしばしばある。今回は食道癌術後21年経過した患者が術後の影響あるいは加齢に伴った嚥下機能低下を認めたため歯科衛生士が摂食機能療法を行い,お楽しみレベルではあるが経口摂取再開に至った一例を経験したので報告する。
【症例および経過】
68歳,女性。X年に頸部食道癌に対し咽喉食摘術・胃管再建・永久気管孔形成施行。X+21年頃より喉のつかえ感を主訴に摂食飲水困難となり入退院を繰り返していた。原因精査を進めたところ,通過障害を来すような器質性病変や粘膜病変は認めず,当院摂食嚥下センターへ紹介受診となり嚥下造影検査(VF検査)を行った。VFの結果,喉頭挙上不良で多量の咽頭残留が生じ通過までに複数回嚥下が必要だった。食道入口部の開大不全があり,水分やゼリーは時間をかけて通過するが全粥は通過困難であった。頸部食道癌を原因とする嚥下障害と判断され,歯科衛生士による摂食機能療法介入となった。誤嚥性肺炎予防のため口腔清掃指導を行い,頸部ストレッチ・口腔粗大運動・咽頭アイスマッサージ後の空嚥下・徒手的頸部筋力増強訓練を中心に間接訓練を実施した。患者は訓練へのモチベーションが低下したり,嚥下を行うことへの不安感から直接訓練の拒否もあり思うように訓練が進まない時期もあった。しかし,1週間毎に短期目標を設定したところ,1つずつ目標を達成することで患者への自信にも繋がり,その後歯科医師同行のもと訓練介入から7週間後に直接訓練(ゼリー)を開始し明らかな誤嚥徴候なく経過した。訓練の結果,経口摂取のみでは必要な栄養量が確保できないため腸瘻造設となり,経口摂取はお楽しみレベルを維持していただくこととなった。
【結果と考察】
今回の症例は嚥下機能の改善は限定的であったが,お楽しみレベルで経口摂取可能となった。患者からは「もう食べることができないかと思った」と少量の経口摂取のみでも喜ばれていた。入院期間が長期化したり,思うように直接訓練まで移行できずにいたため患者のモチベーションの低下を危惧していたが,短期目標を患者と共有し達成することで訓練意欲向上に繋がったと思われる。改めて患者の状態に合わせた目標設定や目標を共有することの大切さを感じるとともに訓練の継続性の意義を感じた。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)