一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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優秀ポスターコンペティション

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優秀ポスター賞コンペティション
地域歯科医療部門

2023年6月16日(金) 17:00 〜 18:00 ポスター会場 (1階 G3)

[優秀P地域-1] 一般歯科医院に定期的に通院している高齢患者の口腔機能の低下とBody Mass Indexおよびサルコペニアの関係

○松下 祐也1、渡邊 裕2、白波瀬 龍一1、山崎 裕2 (1. 医療法人社団秀和会つがやす歯科医院、2. 北海道大学大学院歯学研究院口腔健康科学分野高齢者歯科学教室)

【目的】
 本研究の目的は一般歯科医院に定期的に通院している高齢患者において,口腔機能の低下と低BMIおよびサルコペニアとの関係を検討することである。
【方法】
 一般歯科医院に定期的に通院している65歳以上の高齢患者から研究参加への同意を得て,口腔機能精密検査,AWGS2019基準によるサルコペニアおよびBMIの評価を行った。健常群,適正・高BMI+サルコペニア群,低BMI+サルコペニア群の3群を従属変数とした多項ロジスティック回帰分析を行った。さらに共分散構造分析法を用いて,推定パス図を作成し,各項目の観測変数の因果関係を調べた。
【結果と考察】
 分析対象者は290名(男性47.9%、平均年齢75.1 ± 6.4歳)。口腔機能精密検査で低下者が多かったのは,低咬合力(154名,53.1%),舌口唇運動機能低下(189名、65.2%),低舌圧(145名、50.0%)であった。多項ロジスティック回帰分析の結果,健常群を基準とした場合,適正・高BMI+サルコペニア群では,残存歯数(OR; 0.93,95% CI; 0.89-0.98),舌圧(OR; 0.92,95% CI; 0.86-0.98)が有意に関連していた。低BMI+サルコペニア群は,舌口唇運動機能検査[ka]音(OR; 0.67,95% CI; 0.45-0.98),舌圧(OR; 0.91,95% CI; 0.86-0.96),嚥下機能(OR; 3.05,95% CI; 1.36-6.84),口腔機能低下症の有無(OR; 2.75,95% CI; 1.10-6.88),口腔機能低下該当項目数(OR; 1.69,95% CI; 1.22-2.34)が有意に関連していた。共分散構造分析の結果,舌口唇運動機能 [ka]音の低下は低舌圧と,低舌圧はサルコペニアと,サルコペニアは低BMIと嚥下機能の低下と関連していた。また,嚥下機能の低下は低BMIと関連していた。口腔機能精密検査において舌口唇運動機能検査[ka]音と低舌圧が認められ,低BMIである患者は,サルコペニアと嚥下機能の低下がある可能性を考慮する必要がある。そのような患者に対しては歯科医院で定期的な口腔機能精密検査に加え,嚥下機能の評価,体重測定を含む,食事栄養評価を行い,悪化がみられるようであれば速やかに専門医療機関と連携する必要があると思われる。
(COI開示:なし)
(北海大学大学院歯学研究院臨床・疫学研究倫理審査委員会承認番号2019第4号)