一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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優秀ポスターコンペティション

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優秀ポスター賞コンペティション
地域歯科医療部門

2023年6月16日(金) 17:00 〜 18:00 ポスター会場 (1階 G3)

[優秀P地域-3] 初診時100歳以上で地域歯科医師会診療所に来院した患者の検討

○間宮 秀樹1、堀本 進1、菊地 幸信1、秋本 覚1、小林 利也1、和田 光利1、片山 正昭1 (1. 藤沢市歯科医師会)

[目的]
 藤沢市の高齢化率は令和5年1月時点で24.48%,100歳以上は令和2年の調査では245人で増加傾向にあり,歯科受診も増加していると予想される。第23回完全生命表では90歳の平均寿命は男性4.49歳,女性5.85歳であることから,100歳以上の歯科患者では,生命予後の考慮も重要と考えられる。藤沢市歯科医師会南部要介護高齢者診療部門では初診患者に対して歯科麻酔科医が本人と付添に医療面接し,治療中はモニタリングを行って安全確保に努めている。今回,我々は初診時年齢100歳以上の患者について調査した。
[方法]
 令和元年1月から令和4年12月までの4年間の初診患者のうち100歳以上の患者について,来院経緯,介護度,基礎疾患,残存歯数,歯科治療内容,治療回数,初診時血圧,合併症等について診療記録および麻酔記録をもとに検討した。
[結果と考察]
 当該期間中に3名が来院していた。
症例1:100歳女性。「入れ歯があたって痛い」ためケアマネージャーから紹介。要介護2で腎盂炎,骨粗鬆症,等があった。無歯顎で,付添の家族から治療回数を最小限にして欲しいとの希望があり,義歯調整のみ行った。初診時血圧117/56mmHg,心拍数69回/分,動脈血酸素飽和度100%で,治療中に変動なし。入院のため2回目以降の来院はなかった。
症例2:101歳女性。「入れ歯が壊れた」ため開業医から紹介。要介護5で高血圧症,脂質代謝異常症があり,残存歯数は8歯。意思疎通に問題なく,家族の同意も得られたため,新義歯作成と口腔衛生管理を行い,治療回数は6回であった。初診時血圧109/53mmHg,心拍数65回/分,動脈血酸素飽和度93%で,全ての治療時に変動なし。
症例3:101歳女性。「頬の内側に傷がある」ため訪問内科医から歯科医師会へ依頼。要介護4で骨粗鬆症,アルツハイマー型認知症があり,無歯顎であった。義歯調整を行い1回で終了した。初診時血圧159/84mmHg,心拍数67回/分,動脈血酸素飽和度97%で,治療中に収集期圧が1度,180mmHgと上昇したが不快感はなかった。 通院困難なため,訪問診療へ移行。
 今回,3症例とも治療回数を最小限とし,体調確認の徹底とモニタリングにより,合併症なく処置が遂行されていた。超高齢者の歯科治療時に家族が積極的な治療を望まない場合もあるが,本人の希望が明確で家族の協力が得られるならば,主訴への積極的な対応はQOLの向上のためには重要と考えられる。
(COI開示:なし)
(藤沢市歯科医師会倫理委員会承認番号 2022-006)