The 34th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター発表)

一般演題(ポスター発表) » [ポスター発表2] 実態調査

ポスター発表2
実態調査

Sat. Jun 17, 2023 10:30 AM - 11:00 AM ポスター会場 (1階 G3)

座長:石田 瞭(東京歯科大学摂食嚥下リハビリテーション研究室)

[P08] アルツハイマー型認知症重症度と口腔機能評価実施可否に関する検討

○白部 麻樹1、枝広 あや子1、本川 佳子1、森下 志穂1,2、本橋 佳子1、岩崎 正則1、渡邊 裕1,3、平野 浩彦1 (1. 東京都健康長寿医療センター研究所、2. 明海大学、3. 北海道大学大学院歯学研究院)

【目的】
口腔機能検査は被検者が検査方法を理解した上で実行する評価法が多く,認知症高齢者への実施が困難な場面がある。しかし,認知症重症度と口腔機能評価可否に関する詳細な検討は無い。そこでアルツハイマー型認知症(AD)高齢者を対象に,認知症重症度別の口腔機能評価の実施可否についてその実態を把握することを本研究の目的とした。
【方法】
A県O町在住の要介護高齢者を対象に,2015年~2020年に年1回実施した調査に参加した延べ2365名のうち,ADと診断された者の結果を横断データとして利用した。認知症重症度はFunctional Assessment Staging(FAST)を用いた。FASTは値が大きいほど重症度が高く,3で境界状態,4で軽度,5で中等度,6でやや高度,7で高度を表す。口腔機能評価の項目は,オーラルディアドコキネシス(ODK),反復唾液嚥下テスト(RSST),改訂水飲みテスト(MWST),舌圧測定とし,検査の実施可否を調査した。その他の調査項目は,性,年齢,既往歴とした。FAST1~3は該当者が少なかったため1分類と包括し,計5分類で検討した。統計解析はカイ二乗検定,マルチレベルモデル二項ロジスティック回帰分析を行った。
【結果と考察】
解析対象は480件(男性58名,女性422名,平均年齢87.2±6.2歳)であった。カイ二乗検定の結果,ODK,RSST,MWST,舌圧において検査実施可否に有意差が認められた(p<0.05)。性,年齢,脳卒中の既往を調整したロジスティック回帰分析の結果,FAST1~3を基準として検査実施可否に有意に関連していた因子(オッズ比,95%信頼区間)は,ODKでFAST7(47.8,7.5-305.3),RSSTでFAST5(0.2,0.0-0.9)およびFAST7(11.2,4.3-29.4),MWSTでFAST7(23.7,3.8-149.1)であった。以上より,被検者の認知症重症度を踏まえ実施可能な口腔機能評価を適宜選択して実施し,その結果に基づき適切な口腔機能管理,さらには食形態選択等を行うことが望まれる。今後対象者を増やし,より詳細な当該情報の構築を行うと共に,その他の認知症(レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症など)についての検討も必要と考える。
(COI開示:なし)
(東京都健康長寿医療センター 研究倫理審査委員会承認番号 R21-15)