一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

一般演題(ポスター発表) » [ポスター発表2] 実態調査

ポスター発表2
実態調査

2023年6月17日(土) 10:30 〜 11:00 ポスター会場 (1階 G3)

座長:石田 瞭(東京歯科大学摂食嚥下リハビリテーション研究室)

[P12] 病院歯科における認知症の人の歯科診療の実態調査

○枝広 あや子1、白部 麻樹1、森下 志穂2、平野 浩彦1 (1. 東京都健康長寿医療センター研究所、2. 明海大学 保健医療学部口腔保健学科)

【目的】
新オレンジプランや認知症施策推進大綱に歯科医師の役割が明記され,かかりつけ歯科医師向けの認知症対応力向上研修や,認知症の人の歯科診療の受け入れが推進されている。病院歯科にも役割は期待されているところではあるが,病院歯科における認知症の人の歯科診療の受け入れ状況について調べたものはない。本調査では病院歯科を対象に認知症の人の歯科診療の受け入れについて調査を行った。
【方法】
我が国の医療機関のうち「医科病院」として登録され,かつ「歯科」標榜のある1638件を対象に,郵送法により調査を行った。調査内容は歯科医師と歯科衛生士の在籍人数,認知症対応力向上研修を受けた歯科医師・歯科衛生士の人数,認知症の人の歯科診療の受け入れの有無であった。病院歯科は,大学病院歯科,常勤歯科医師2名以上の病院歯科,常勤歯科医師2名未満の病院歯科の3区分に分類し比較検討を行った。解析はIBM SPSS Ver25を用いカイ2乗検定,ロジスティック回帰分析を用いた。
【結果と考察】
返送があったのは555件であり回収率は33.9%であった。大学病院歯科55件,常勤歯科医師2名以上の病院歯科247件,常勤歯科医師2名未満の病院歯科263件のうち,認知症対応力向上研修を受けた歯科医師または歯科衛生士が勤務しているのは順に13.3%,25.9%,25.9%で,研修した歯科医師1名以上の在籍は順に全体の13.3%,23.9%,24.7%(P<0.001),研修した歯科衛生士1名以上の在籍は順に全体の4.4%,8.9%,4.9%(P<0.210)であった。認知症の人が来院する(入院含む)と回答したのは順に97.8%,95.1%,92.4%であり,そのうち他歯科医院において治療困難であった認知症の人の受け入れ経験があると回答したのは63.6%,52.3%,26.7%であった。一方で「当科で困難なケースは他院では不可能であると考え尽力している」旨の記載が見られた。今後の困難ケースの積極的な受け入れへの関連要因について多変量解析を行ったところ,認知症対応力向上研修を受けた歯科医師が複数勤務していることが2.96倍(P=0.020),これまでに困難ケースの受け入れ経験があることが4.12倍(P=0.001)高く関連していた。多忙な病院歯科業務の中でも認知症診療に尽力している病院歯科があり,連携の仕組みの構築が必要である。(COI開示:なし)(東京都健康長寿医療センター研究所倫理審査委員会承認令和2年第37号)