一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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ポスター発表3
症例・施設

2023年6月17日(土) 10:00 〜 10:30 ポスター会場 (1階 G3)

座長:伊藤 加代子(新潟大学医歯学総合病院口腔リハビリテーション科)

[P14] 長期管理中に骨露出がみられ,情報提供によりその原因が判明したMRONJの1例

○秋山 悠一1、稲富 みぎわ1、平塚 正雄2,1 (1. 医療法人社団秀和会 水巻歯科診療所、2. 沖縄県口腔保健医療センター)

【緒言・目的】
超高齢社会を迎えた日本において,MRONJのリスクを抱えた患者は増加していると考えられる。歯科訪問診療においてもMRONJのリスクがある患者に遭遇する機会も少なくない。今回,MRONJが疑われたが初診時の情報からはその原因が判明しなかった症例を経験したので報告する。
【症例および経過】
症例 90歳 女性 主訴:口の中の管理をして欲しい 既往歴:高血圧,アルツハイマー型認知,内服薬:アセルニジピン,マグミット,ゾルピデム。整形外科の受診は6年前が最終であり,現在BP製剤の内服,注射などはない。5年前ケアマネジャーからの紹介があり,在宅にて歯科訪問診療で補綴処置を行い,患者の希望により継続して口腔健康管理を行っていた。口腔内所見:16相当顎堤に3mm×8mmの灰白色の硬組織を認める。触診により歯槽骨と分離していることを確認した。明らかな自発痛の訴えはないが触れると違和感があり,硬組織周囲の歯肉に発赤を認めた。レントゲン撮影を行ったところ,腐骨様の分離像を認めた。 診断名:慢性顎骨骨髄炎。処置:患者本人,家族に分離した腐骨様組織の除去手術を説明し,同意を得た。今回の腐骨様組織の除去手術は低侵襲であると考え,前投薬などは行わないこととした。7日後,局所麻酔下にバイタルサインを測定しながら除去手術を行った。手術創は縫合を行い1次閉鎖とした。経過は良好,術後7日に抜糸を行った。本人に症状を尋ねたところ,「気持ち悪いのが無くなった」とのことであった。原因究明のため,6年前まで受診していた整形外科に情報提供を求めたところ,7年前から1年間のみフォサマックが処方されていたことが分かった。 なお,本報告の発表について患者本人および家族に同意を得ている。
【考察】
今回の症例では初診時に整形外科を受診しておらず,BP製剤による治療歴が不明であったが,腐骨が分離している状態が認められたため外科処置を行い,良好な結果を得た。高齢社会を迎えた我が国において,口腔内の異常として早期にMRONJを発見し,適切な処置を行うことが在宅要介護高齢者のQOL向上・維持につながると考えられた。 (COI開示なし) (医療法人社団秀和会倫理審査委員会 承認番号2302)