The 34th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター発表)

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ポスター発表4
症例・施設

Sat. Jun 17, 2023 10:30 AM - 11:00 AM ポスター会場 (1階 G3)

座長:堀 一浩(新潟大学大学院医歯学総合研究科包括歯科補綴学分野)

[P23] 空気嚥下症に対して舌訓練を行い症状が緩和した症例

○吉岡 裕雄1,2、渥美 陽二郎1 (1. 日本歯科大学新潟病院 訪問歯科口腔ケア科、2. 日本歯科大学新潟病院 口腔ケア機能管理センター)

【緒言・目的】
空気嚥下症は,口腔から多量の空気を飲み込むことによって,二次的にのどの痞え感,腹部膨満感,食欲不振,過度の曖気,ガスペイン,頻回の排ガスなどの症状を呈することが多い。空気嚥下のメカニズムとしてクレンチング(噛みしめ)型と舌圧接型,咽頭嚥下型ならびに混合型が提唱されている。不安や緊張に,抑うつなど,精神心理的ストレスから呑気につながる行動を引き起こすことが多いと指摘されている。過去の報告では心療内科での症例や重症心身障害児,口腔機能の発達不全を伴う児の報告が散見されるが,今回我々は,健常高齢者における空気嚥下症に対し口腔機能訓練(舌訓練)を行う事で症状が緩和した 1 例を経験したので,過去の自験症例とも比較し考察を加えたので報告する。
【症例および経過】
68 歳,女性。骨粗しょう症の既往。X年7月に曖気と下痢を訴え,紹介医(消化器内科)を受診。上部消化管内視鏡検査およびCTにて精査したが器質的疾患は認められず,症状改善がないことから翌年2月精査依頼にて当院紹介来院となった。口腔内は著明な歯科疾患はなく,かかりつけ歯科にて定期的に受診し管理されている。開口時に顎関節の軽度の疼痛があり,すでにスプリントを使用していた。自覚しているストレス因子などは聴取されなかった。嚥下造影検査にて精査を行ったところ,摂食嚥下に関する器質的な異常はなく,運動性もスムーズであったが,嚥下時に軽微な空気嚥下が確認された。咽頭収縮がやや弱く,梨状窩と喉頭蓋谷に少量の咽頭残留をきたした。舌圧の強化を重点的に口腔機能訓練を3か月行ったところ,空気嚥下の量が減少したと自覚し,膨満感も緩和した。
【考察】
クレンチングが深く関与している噛みしめ呑気症候群は,日常生活上の心理的・社会的ストレスが原因となっている心身症の一つとされている。歯科においてはスプリント療法が治療の中心となることが多く,自験例でもスプリントによって改善したケースを経験したことがある。本症例では既にスプリントを装着していたが効果はみられていなかった。我々は,無意識下嚥下時の誤った舌位や口腔周囲筋の不調和などによって過剰な空気を嚥下していることが原因と考え,呑気に結びつく行動やしぐさへの気づきと改善とともに,口腔機能低下に対する訓練によって症状を緩和させることができた。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)