The 34th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター発表)

一般演題(ポスター発表) » [ポスター発表9] 歯科衛生士

ポスター発表9
歯科衛生士

Sun. Jun 18, 2023 10:00 AM - 10:25 AM ポスター会場 (1階 G3)

座長:金森 大輔(藤田医科大学 医学部 七栗歯科)

[P50] 地域包括ケアシステムで見守る慢性心不全患者に対する歯科訪問診療の経験

○馬場 めぐみ1、室田 弘二1、橋本 みゆき2、松原 利江子1、類家 春菜1、先川 信3、寺尾 導子2、酒井 博司4 (1. 医療法人臨生会 名寄歯科医院、2. 医療法人臨生会 吉田歯科分院、3. 医療法人臨生会 吉田病院歯科口腔外科、4. 名寄市立総合病院)

【緒言・目的】
現在,各自治体で地域の特性を生かした地域包括ケアシステムの構築が進められている。北海道名寄市では,地域包括支援センターが中心となり,市内の主要な病院・診療所・調剤薬局と全ての介護施設が参加し,ICTを活用した医療介護連携が構築されている。今回われわれは,多職種と連携することで心不全に伴う全身状態や生活環境の変化に対応し,歯科衛生士としてQOLを維持する一助となった経験をしたので報告する。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【症例および経過】
88歳,女性,独居。慢性心不全,洞不全症候群,慢性腎不全,うつ病,高血圧症,橋本病,腰痛症にて市内基幹病院外来へ通院していた。2018年(83歳),口腔内の疼痛を主訴に義歯の調整を希望し,ケアマネジャーからの依頼で歯科訪問診療での初診となった。口腔内所見は口腔乾燥が著しく,義歯調整と唾液腺マッサージ指導を行った。その後は,症状の強い時だけ義歯調整の断続的な依頼があった。約2年後には,口腔粘膜湿潤度:17.9,舌圧:25.9kPaで,口腔機能の低下を認めた。 慢性心不全増悪のため入退院を繰り返し,2022年3月にはペースメーカー植え込み術が施行された。退院後,口腔内全体の強い疼痛と,新義歯希望の依頼があった。多職種と連携し,継続した訪問口腔リハビリテーション指導を行った。口腔粘膜湿潤度:27.5,舌圧:32.1kPaまで改善し,上下顎総義歯を新たに装着して良好に経過している。
【考察】
日本心不全学会では,高齢者の心不全を進行性の予後不良疾患として捉えており,われわれもチーム医療の一員として緩和・終末期医療の一翼を担う機会がある。本症例は,心不全の増悪に伴う全身状態や,ご主人の入院による独居など,生活環境の大きな変化が生じていた。そうした中,多職種と連携することで,患者の病態に対応した診療が可能となった。口腔機能が維持・向上することで,口腔内疼痛の訴えが減少し,QOLの改善につながったと多職種から報告を受けた。その後,体重の増減もほとんど無く,心不全マーカーのBNPも安定しており,心不全重症化予防の一因になったと考えた。チーム医療の一員として関わるために,更なる医学的知識の蓄積,そして,歯科衛生士として積極的に地域包括ケアシステムへ参加する必要があると考えられた。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)