一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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課題口演2
口腔機能

2023年6月17日(土) 10:10 〜 11:30 第3会場 (3階 G304)

[課題2-5] 機能的咬合支持のない要介護高齢者の閉口力と食事形態分類の関連

○森豊 理英子1、中川 量晴1、山口 浩平1、長谷川 翔平1、吉見 佳那子、石井 美紀、柳田 陵介、戸原 玄 (1. 東京医科歯科大学摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【目的】
要介護高齢者の中には義歯を装着できず,長期的に機能的咬合支持を喪失している者も多い。臨床ではこのような者も咀嚼を要する食品を摂取し,食塊形成や嚥下機能が良好な例を経験する。しかし,機能的咬合支持が無い高齢者の咬合力に相当する,顎堤による食品の押し潰し能力に着目した研究はこれまでにない。そこで本研究では,閉口して顎堤で物を押し潰す力を閉口力と定義し,機能的咬合支持のない要介護高齢者の閉口力と食事形態の関連性を検討した。
【方法】
当科の訪問歯科診療を受ける要介護高齢者のうち咬合支持を喪失し,かつ義歯を使用せず,主たる栄養摂取方法が経口摂取である者を対象とした。調査項目は年齢,性別,BMI,バーセル指数(BI)とし,舌圧および閉口力計(村田製作所,開発品)を用いた閉口力を測定した。推奨される食事形態を,International dysphagia diet standardusation initiativeのフレームワークを用いてlevel 3から7を4段階に分類した(level 3・4:咀嚼は必要,level 5:最小限の咀嚼が必要,level 6:咀嚼は必要,level 7:十分に長く咀嚼する)。閉口力の差異を一元配置分散分析を用い,食事形態の関連因子を順序ロジスティック解析を用いて検討した(p<0.05) 。
【結果と考察】
対象者は105名(男性31名,女性74名,平均年齢85.8±7.1歳),内訳は,level 3・4: 21名,level 5: 18名,level 6: 40名,level 7: 26名であった。閉口力(N)(中央値,最小値-最大値)は順に36.7(20.0-63.3) ,46.7(20.0-70.0),60.0(36.7-166.7),86.7(46.7-296.7)であり,閉口力はLevel 3・4,5,6の者と比較して,level 7の者で有意に高値を示した。食事形態と関連する因子はBI,舌圧,閉口力であった。要介護高齢者において,咀嚼を要する食事を摂取している者ほど閉口力が高い傾向にあった。また,閉口力は舌圧に独立して食事形態に関連していた。閉口力は機能的咬合支持のない要介護高齢者の食事形態の推定に有用であることが示唆された。 (COI開示:なし) (東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会承認番号D2020-024)