一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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シンポジウム1
口腔内の老化を基礎から知る

2023年6月17日(土) 08:45 〜 09:45 第2会場 (3階 G303)

座長:
金澤 学(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 口腔デジタルプロセス学分野)
黒嶋 伸一郎(長崎大学 生命医科学域(歯学系) 口腔インプラント学分野)

企画:学術委員会

[SY1-1] 薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)を知ろう

○黒嶋 伸一郎1 (1. 長崎大学 生命医科学域(歯学系) 口腔インプラント学分野)

【略歴】
2002年:北海道大学歯学部歯学科 卒業
2005年:日本学術振興会特別研究員
2006年:北海道大学大学院歯学研究科博士課程 修了[博士(歯学)]
2006年~2011年:北海道大学大学院歯学研究科口腔健康科学講座高齢者歯科学教室 助教
2010年~2012年:ミシガン大学歯学部生体材料科学講座補綴科 客員助教・リサーチフェロー
2012年~2018年:長崎大学大学院医歯薬学総合研究科口腔インプラント学分野 助教→講師昇任
2018年~現在:長崎大学生命医科学域(歯学系)口腔インプラント学分野 准教授
【抄録(Abstract)】
わが国では約1,600万人の骨粗鬆症患者がおり,年間100万人ががんに罹患するが,骨粗鬆症や一部のがんに対しては,ビスホスホネート製剤やデノスマブを総称した骨吸収抑制薬が治療に用いられることが多い.一方,薬剤関連顎骨壊死(Medication-related Osteonecrosis of the Jaw:MRONJ)は,骨吸収抑制薬を使用している患者の一部において,抜歯(約60%),インプラント治療(4%),歯周疾患(5%),さまざまな外科手術(7%),不適合義歯を含む補綴歯科治療(7%),ならびに自然発症(15%)などをきっかけに発症する薬剤の副作用であり,歯科医療に従事する歯科医師や関係者にとって頭の痛い問題となっている.また,高齢者であることや,高齢者で多く使われる特定の薬剤(抗がん剤と副腎皮質ステロイド製剤)の使用などはMRONJのハイリスクファクターとなっており,高齢者が急増しているわが国では,今後もMRONJを発症する患者が増加していくことが見込まれている.
 MRONJの発現頻度は高額の宝くじに当たる確率と同じように極めて低いが,いったん発症すると患者のQOLやお口のQOLを著しく低下させ,顔貌の変形などから社会生活にも大きな影響を与える場合や,経口摂取が困難となる場合もある.また,近年では,施設入所者でもMRONJが散見されるようになってきたことから,私たちにはMRONJに関する正しい情報を知っておくことが求められている.
 一方,演者は現在まで先駆的にMRONJの基礎研究を展開し,複数のMRONJモデル動物や,それらを治癒させるMRONJレスキューモデル動物を作製することで,「どうしてMRONJは起こるのか」,「治療法はないのか」などについて解析を進めている.
 本講演では,明日から臨床現場で使えるMRONJの臨床的情報を分かりやすくご提供するとともに,演者が行っているMRONJの基礎研究について紹介する.