一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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シンポジウム7
若手歯科医師に伝えたい歯科訪問診療の必修事項

2023年6月18日(日) 08:20 〜 10:20 第2会場 (3階 G303)

座長:
古屋 純一(昭和大学 歯学部 口腔機能管理学部門)
小玉 剛(こだま歯科医院)

企画:在宅歯科医療委員会

[SY7-4] 人と生活を支える訪問での摂食嚥下の診療

○中川 量晴1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【略歴】
2009年 日本大学大学院 歯学研究科 修了
2009年 日本大学歯学部 摂食機能療法学講座 専修医
2010年 昭和大学歯学部 スペシャルニーズ口腔医学講座 助教
2013年 藤田保健衛生大学医学部 歯科 助教
2016年 同 講師
2018年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野 助教
2020年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野 助教
2022年 同 准教授(現在に至る)
【抄録(Abstract)】
わたしは大学を拠点として、ほぼ毎日患者宅や高齢者施設、回復期リハビリテーション病院などで摂食嚥下の診療(以下、嚥下診療)をしている歯科医師です。訪問での嚥下診療は、患者さんの身体機能や生活環境により、その関わり方が変化します。外来診療から訪問診療に移行するケース、入院していた病院から在宅へ場所を移すケース、そして初めから患者宅や施設へ伺うケースなどです。いずれの場合でも「食べる」機能に関与するわけなので、患者さんの終末を見届けるまで関わりが続くことも少なくなく、また訪問に移行すれば、生活に一歩踏み込んだ支援や周囲の人を巻き込んだ関わりが求められます。嚥下機能の評価そのものは患者さんが置かれる環境によって変わることはありませんが、評価に基づいた対応法は環境によって変わることがあります。特に若手の歯科医師の先生や歯科衛生士さんに、このような視点の持ち方や実際にどのように関わればよいか、いくつかの症例を通してできるだけ分かりやすくお伝えしたいと思います。
とある日のわたしの外来診療を振り返ってみました。外来にやってきた患者さんは50歳代の女性で、若年性の進行性疾患患者でした。主訴は、胃ろうであるが経口摂取できるか知りたい、ということです。車いすで来院され、家族4名が付き添い、ご本人を大変気にかけている様子で入室されました。患者さんは目を閉じていますが、家族の声かけにうっすら目を開け少しだけ応答があるような状態で、抱えられればかろうじて起立して立位を維持できる様子です。家族は、神経内科クリニックの診療情報提供書を持参して来られました。さて、このような患者さんに初めて対面したときに、皆さんは最初にどのようなアクションを起こし、どのような診察の流れをイメージしますか?嚥下診療の関わり方はさまざまです、と述べたとおり、このように外来診療から始まるケースもある訳で、この患者さんと家族の主訴に十分に応えるためには何が必要か、というあたりを一緒に考えていきたいと思います。この場面で自ら取るアクションの中に、嚥下診療の重要な要素が含まれていることをお話ししたいと思います。
他に、静岡県の開業医の先生方と、オンラインを通した嚥下診療を定期的に実施していますので、その様子も合わせてご紹介したいと思います。次世代を担う若手の歯科医師、歯科衛生士の皆さんには、これからの嚥下診療にICT(Information and Communication Trchnology)を応用することの有用性を知っていただきたいと考えています。