第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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教育講演

[EL6] ガイドラインをクリティカルケア看護の実践に活かす

Sun. Jun 12, 2022 1:10 PM - 2:10 PM 第1会場 (国際会議場 メインホール)

座長:清村 紀子(大分大学)
演者:河合 佑亮(藤田医科大学病院 看護部)

1:10 PM - 2:10 PM

[EL6-01] ガイドラインをクリティカルケア看護の実践に活かす

○河合 佑亮1 (1. 藤田医科大学病院 看護部)

Keywords:診療ガイドライン

日本医療機能評価機構のEBM普及推進事業(Minds)によると、診療ガイドラインは「健康に関する重要な課題について、医療利用者と提供者の意思決定を支援するために、システマティックレビューによりエビデンス総体を評価し、益と害のバランスを勘案して、最適と考えられる推奨を提示する文書」と定義されています。この定義から分かるように、診療ガイドラインは看護師にとって金科玉条のごとくそのすべてに従うべきものではなく、看護師の意思決定(看護実践の判断)を支援するものであり、看護師が看護目標を達成するための看護計画の中に診療ガイドラインの推奨等を意識的に適用することでその真価が発揮されます。
例えば、日本版敗血症診療ガイドライン2020(J-SSCG2020)ではCQ10-3において、Light sedationを行うことは、Deep sedationと比較して人工呼吸器装着期間が約2.5日短縮すること等がシステマティックレビューで示唆され、弱く推奨されています(GRADE 2C:エビデンスの確実性=「低」)。看護師は人工呼吸器管理中の成人重症患者に対して、人工呼吸器の早期離脱を看護目標に、CQ10-3を根拠にLight sedationの実施について医療チームに提案することを看護計画に組み込みました。一方で、前日から循環作動薬の使用量が漸増しており、臨床上の懸念がある場合には、看護師はLight sedationの非実施について医療チームに提案することを看護計画に組み込むかもしれません。これらはいずれも診療ガイドラインの看護実践への活用であり、人工呼吸器の早期離脱を目指した看護です。診療ガイドラインにおける推奨の強さは、エビデンスの確実性、利益と不利益のバランス、価値観や好み、コストや資源の4つの基準によって規定されるため、その推奨度は実質的には連続的なグラデーションであり、「白」または「黒」のように二項対立で捉えるのは不適切とされています。診療ガイドラインにおける「弱い推奨」は「白め淡い灰色」であり、行わない場合もありますが、行うことを奨められることが多い介入で、全体でみれば、益が害を上回る可能性が高く、しかし、患者によっては害のほうが強く生じることもありうる。と説明されています。そのため、患者の目の前にいる看護師がしっかりと考えて、看護目標の達成のために当該診療行為を適用する必要性を判断し、必要と選択した場合には医師の指示に基づいて実施するということが、診療ガイドラインを看護実践に活用するための最も重要なポイントになると考えます。そしてこのポイントをおさえることができれば、エビデンスに基づいた質の高い看護実践の実現はもとより、看護師が自らのケアを価値あるものとして評価できることにも繋がり、クリティカルケア看護を一層楽しむことができるようになることが期待されます。
本講演ではJ-SSCG2020を中心に診療ガイドラインの見方を解説し、看護実践への活用について症例を通して見ていきます。