日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM27] 大気圏・電離圏

2015年5月26日(火) 11:00 〜 12:45 A01 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*大塚 雄一(名古屋大学太陽地球環境研究所)、津川 卓也(情報通信研究機構)、川村 誠治(独立行政法人 情報通信研究機構)、座長:冨川 喜弘(国立極地研究所)、柿並 義宏(高知工科大学システム工学群)

11:30 〜 11:45

[PEM27-13] InSARを用いた中緯度スポラディックEの検出

*鈴木 貴斗1前田 隼1 (1.北海道大学大学院理学院自然史科学専攻)

キーワード:InSAR, スポラディックE, GPS-TEC

Maeda and Heki. (2014)はGlobal Positioning System –Total Electron Content (GPS-TEC)を用いることで,これまで観測点上空のみでしか観測されなかった日本上空のスポラディックE (以下Es)を二次元的に捉えることに成功した.一方,GPSと同様に地殻変動測定を目的とした宇宙測地技術にInterferometric Synthetic Aperture Radar (InSAR)がある.SARは航空機や衛星などのプラットホームに搭載されたアンテナを用いて,地上ターゲットがビームの中に入り続ける間中の反射波を全て集めることで,仮想的に大きな開口長のアンテナを実現し,高分解能のレーダー画像を生成する技術である.InSARは異なる二つの時期に観測されたSARの位相データの差を取る干渉処理によって,二つの時期の間に起きた地殻変動を面的に画像として検出する技術である.InSARの画像にも電離圏の影響が現れることがあり,これは使用したマイクロ波の周波数が低いほどより顕著に現れ,Advanced Land Observing Satellite (ALOS)のようなL-bandのマイクロ波を用いた衛星は電離圏の現象の検出に有利である.GPSに対して空間分解能で勝るInSARでEsを検出できればEsの空間分布をより詳細に知ることができ,これまで不明瞭であったEsの発生メカニズム解明の手助けになると期待される.本研究では日本上空のEsをInSARを用いて検出することを目的とした.
まず,稚内・国分寺・山川のイオノゾンデで2006年~2010年の5~8月の午前中にEsの臨界周波数foEsが15MHz以上となった日を選んだ.次に,観測日時と観測場所が出来るだけ近いALOS/PALSARのデータを選び,干渉画像を作成した.その中の2009年3月28日(Master)と2009年6月28日(Slave)のペアの干渉画像に興味深い位相変化が現れ,北東方向に傾きを持つ.全体の形は瀬戸内海で途切れているのでわからないが,4つのパッチが見て取れ,1つのパッチの大きさは20km程度であった.この位相変化をTEC変化量(△TEC)に換算したところ,△TEC=0.44TECUとなった.これは,Esが発生した際の△TECに近い値である.しかし,InSARの画像からでは高度の拘束ができない.そこでGPS-TECを用いて解析したところ,GPS-TECでもInSARの画像で位相変化が現れた場所付近に同じようなシグナルが検出され,高度を100kmと特定することができた.よって,位相変化を起こした原因がEsであることがわかり,InSARで中緯度Esを検出することができた.