日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT23] 地球史解読:冥王代から現代まで

2015年5月25日(月) 14:15 〜 16:00 104 (1F)

コンビーナ:*小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、鈴木 勝彦(独立行政法人海洋研究開発機構・地球内部ダイナミクス領域)、座長:中村 謙太郎(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)

15:15 〜 15:30

[BPT23-18] ブラジルEspinhaco超層群Itapanhoacanga層の層序と砕屑性ジルコンU-Pb年代

*吉丸 慧1清川 昌一1堤 之恭2Carlos A. Rosiere3 (1.九州大学、2.国立科学博物館、3.ミナス・ジェライス国立大学)

キーワード:Espinhaco超層群, BIF, 砕屑性ジルコン

鉄鉱床は地球史における地球表層の酸化状態を示す重要な指標である.酸素濃度が上昇する時期と思われる太古代から古原生代初期にできた鉄鉱床の量は,世界の鉄鉱層の約八割を占め,1.8 Ga以降のものと比べ圧倒的に多い(Bekker et al., 2010).しかし,ブラジルEspinhaco超層群Itapanhoacanga層では1.7 Gaより新しいの縞状鉄鉱層が報告さた(Chemale Jr et al., 2012).本研究では,今まで報告が非常に少ない,中原生代の鉄鉱層について,その堆積場,堆積作用を調べる為に調査を行った.特に,まずこの地層の年代をより詳細に明らかにするために,砂岩層に含まれる砕屑性ジルコンについて,国立科学博物館のICP-MSによるU-Pb年代を求め,鉄鉱層の形成年代の制限と岩相の記載を行った.
 ブラジル中部に位置するSao Franciscoクラトンは,太古代?原生代の基盤とそれを覆う原生代前期と顕生代の地質帯で構成される.このクラトンの中央に南北に伸びるEspinhaco超層群は,クラトンの間に形成されたリフトを埋める浅海成の堆積物で構成されており(Herrgesell and Pflug, 1986),その南部には層状鉄鉱層を含むItapanhocanga層が南北のスラストに沿って東傾斜で分布する.スラストで接する同時代のSao Joao da Chapada層の堆積開始年代は1703±12 Ma(U?Pb砕屑性ジルコン年代,Chemale Jr et al., 2012)に制限される.しかし,Conceicao do Mato Dentro地域北部のItapanhocanga層の鉄鉱層の堆積年代について明らかでない.
 Conceicao do Mato Dentro地域北部にはItapanhocanga層の層序がスラストシートの断面として露出している.この地域では層厚の150mほどの砕屑性雲母片岩ユニット(ユニット1)と,それを不整合に覆う600m以上の礫岩?細粒砂岩起源の片岩ユニット(ユニット2)で構成される.特にユニット2は,全層準において珪岩が支配的で全体として上方細粒化を示す.地層は全体的に片岩になっているが,特に層序的に下位のスラスト付近では顕著な扁平化を示す礫岩が見られる.層序は下部から中部にかけて,円磨度の高い花崗岩礫や石英礫を含む巨礫が礫支持の状態で小礫へ移行し,中部から上部にかけて中粒?細粒砂岩になる.上部は赤い砂岩になり,最上部に2-5mほどの鉄鉱層が重なる.
 砕屑性ジルコンU-Pb年代測定は,この上方細粒化するユニット2の3地点で採取した試料のジルコンについて行った.測定ジルコン278スポットのうち,コンコーダントな年代データは合計83得られた.その分布は 1727Ma,2160Ma,2681Ma,2812Ma,3142Ma,3290Maでピークがえられた.このうち堆積年代の上限を示す最も若い年代値は1639±79Maであり,Chemale Jr et al., (2012)で示される17億年前より新しい可能性が示唆される結果となった.