日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS26] 地震波伝播:理論と応用

2015年5月26日(火) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*齊藤 竜彦(独立行政法人 防災科学技術研究所)、中原 恒(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻固体地球物理学講座)、松島 潤(東京大学大学院)、西田 究(東京大学地震研究所)、白石 和也(株式会社地球科学総合研究所)

18:15 〜 19:30

[SSS26-P06] 地震波の減衰がS波偏向異方性に及ぼす影響

*小田 仁1 (1.岡山大学 理学部)

キーワード:地震波の減衰, S波偏向異方性

1.はじめに
異方性弾性体を伝わるS波のradial (R)成分とtransverse (T)成分の間には位相のずれが生じる。同様に,非弾性媒質中を伝わるS波のR, T成分の位相にずれが生じるならば,非弾性・異方性媒質を伝わるS波の偏向異方性が,媒質の非弾性効果によって影響を受ける可能性がある。そこで,これを確かめるために,非弾性・異方性水平成層構造に平面P波が入射したときのレシーバ関数を計算し,それに現れるPs変換波の偏向異方性に減衰が及ぼす影響について調べた。

2.非弾性・異方性水平成層速度構造
半無限弾性体の上に二つの非弾性層が水平に重なる三層構造を仮定した。二つの表層は,水平面内に六方対称軸を持ち,対称軸は地表から1番目の層で北から35度,2番目の層で65度の方角を向いているものとした。また,3番目の層である半無限媒質は,完全弾性体で異方性は無いものとした。第1層,第2層の厚さは35kmとし,各層のP波,S波の異方性の大きさにはそれぞれ2%,5%とした。また,P波,S波の減衰に関する無次元量Qp,Qsは第1層で50, 25, 第2層で100, 50とした。各層の等方性P波,S波速度及び密度に地殻・上部マントルの代表的な値を与えた。

3.P波レシーバ関数の計算
非弾性層の弾性率を六方晶系の弾性率にQp,Qsを組み込んだ複素弾性率で表し,平面P波が入射角10度で基盤から非弾性・異方性水平速度構造に入射したときの応答関数を,入射波が伝播する方位を変化させて計算した。応答関数の計算には層行列法(Crampin, 1970)を用いた。この応答関数を使って,P波レシーバ関数を計算した。レシーバ関数の計算には,water level法(Langston,1979)を用いた。

4.結果
層内に減衰が有る場合と無い場合のレシーバ関数波形を比較した。両方のレシーバ関数には、層境界面で発生したPs変換波が現れた。減衰が有る場合のPs変換波の波形は,それが無い場合の波形よりも短周期成分が取り除かれて,波形が滑らかになった。また,非弾性による波動の減衰のために,Ps変換波の振幅が小さくなることも確認した。層境界面で発生したPs変換波に剥ぎ取り解析(Oda, 2011)を行って,二つの異方性層の六方対称軸の向きや異方性の強さを見積った。得られた六方対称軸の向きは,減衰が有る無しにかかわらず,速度モデルに与えた対称軸の向きと概ね一致した。また,解析より得られた異方性の強さも,速度構造モデルから予測される強さと大体一致した。このことは,地震波の減衰が地震波異方性の測定に大きな影響を及ぼさないことを意味する。