日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS19] 海洋と大気の波動・渦・循環力学

2019年5月27日(月) 09:00 〜 10:30 301A (3F)

コンビーナ:田中 祐希(東京大学大学院理学系研究科)、古恵 亮(APL/JAMSTEC)、久木 幸治(琉球大学)、杉本 憲彦(慶應義塾大学 法学部 日吉物理学教室)、座長:杉本 憲彦古恵 亮

09:00 〜 09:15

[AOS19-01] エクマンパンピング不安定

★招待講演

*宮本 佳明1David Nolan2杉本 憲彦3 (1.慶應義塾大学 環境情報学部、2.Rosenstiel School of Marine and Atmospheric Science, University of Miami、3.慶應義塾大学 法学部 日吉物理学教室)

キーワード:エクマンパンピング

回転する系では地表面付近にエクマン層と呼ばれる地表面摩擦の影響を受けた層が形成される。エクマン層内の質量収束・発散と対応して、その上端・下端では、エクマン層と質量をやり取りする鉛直流(エクマンパンピング速度)が存在する。地球大気で言えば、エクマンパンピング速度は平均流として与えられる自由大気の相対渦度に比例することが一般的に知られている(Holton 2006)。また、この関係により、自由大気中の渦は、効率的に角運動量を輸送して減衰するという性質がある(線形論では擾乱が指数関数的に減衰)。しかしこの関係は、自由大気の流速が遅く一様であるという仮定の下導出されている。そこで本研究では、エクマンパンピング解を一般化するために、この仮定を取り除いた定式化を試みた。すると、ある条件を満たすと擾乱が指数関数的に成長することが示された。つまり、これまで渦を減衰するのみと考えられていたエクマンパンピングが、ある条件を満たすと逆に渦の成長を促す方向に働くことが分かった。その条件とは、自由大気の流速が速く、渦度の空間変動が大きいときである。著者らは、台風の中心外側に形成する第二の目の壁雲(通常は目を取り囲む1つしかない)の発生メカニズムに応用できることを示した。