日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD01] 重力・ジオイド

2019年5月28日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:兒玉 篤郎(国土交通省国土地理院)、岡 大輔(地方独立行政法人北海道立総合研究機構環境・地質研究本部地質研究所)

[SGD01-P02] アラスカ南東部氷河融解に伴う地殻変動及び重力変化の数値的モデリング

*長縄 和洋1風間 卓仁1 (1.京都大学 大学院 理学研究科)

キーワード:氷河融解、氷河性地殻均衡、アラスカ、重力変化、地殻隆起

温暖化による氷河融解は海面上昇の要因として大きな関心ごとである。これまで高度計や重力計、GNSSなどの測地観測によって、その変動が推定されてきた。このような測地観測では様々な固体地球の応答も重畳して観測されるため、観測値から氷河融解を推定するには、多くの工夫が必要である。その工夫の一つとして、氷河融解に伴う固体地球の変動を数値的にモデリングすることが挙げられる。氷河の融解は地球表層での質量分布の変化と固体地球の変形(GIA : Glacial Isostatic Adjustment)を伴うため、様々な時空間スケールで海水準変動、地殻変動、重力場変動などを引き起こす。これらの変動を測地観測から定量的に把握することは困難であり、数値モデリングの向上が不可欠である。

本研究の対象地域であるアラスカ南東部は現在約16 km3/yrの氷河が融解しており(Larsen et al., 2007)、氷河融解の更なる加速の可能性も指摘されている(Arendt et al., 2002)。当地域では2000年代以降から稠密なGNSS網が整備され、最大約3 cm/yrの地表隆起が観測されてきた(Larsen et al., 2004)。この観測結果を用いて、Larsen et al. (2005)やSato et al. (2012)などの先行研究では当地域のGIA数値モデルを構築してきた。一方で、当地域では2006年より絶対重力計による観測が繰り返し行われており、-4~-7 microGal/yrの絶対重力変化が観測されてきた(Sun et al., 2010)。しかしながら、先行研究では重力変化を取り入れた数値モデルは構築されておらず、モデルと観測に乖離が存在するままであった。そのため、当地域の重力場変動は定量的に理解されておらず、衛星重力計に氷河観測において大きな誤差要因となる可能性がある。

そこで本研究は、地殻変動・重力場変動の両面から当地域のGIA数値モデルの精度向上を目指し、以下のような数値モデリングを行う。当地域での地殻変動・重力場変動はtectonicな変形を除くと、現在の氷河融解による地球表層の万有引力変化、現在の氷河融解による固体地球の弾性変形、過去の氷河融解による固体地球の粘弾性変形の3つが考えられる。本研究では、現在のアラスカ南東部氷河融解モデル(Larsen et al., 2007)を用いた弾性体の荷重変形計算と、過去の氷河融解歴モデル(e.g., ICE-6G; Peltier et al., 2015)を用いた粘弾性荷重変形計算によって、アラスカ南東部の絶対重力基準点6点におけるこれら3つの変動を推定する。本発表ではこのようなモデル計算の結果と、2015年までに新たに取得・補正されたGNSS・絶対重力データを比較し、当地域の氷河融解及びGIAについて議論する。