日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-AG 応用地球科学

[M-AG39] 海洋地球インフォマティクス

2019年5月30日(木) 15:30 〜 17:00 A10 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:坪井 誠司(海洋研究開発機構)、高橋 桂子(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、金尾 政紀(国立極地研究所)、松岡 大祐(海洋研究開発機構)、座長:坪井 誠司松岡 大祐

16:35 〜 16:50

[MAG39-11] 人間活動による排熱を上手に放出し街の暑熱環境を改善する手法

*杉山 徹1仝 瀟然2吉田 聡2佐土原 聡2 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球情報基盤センター、2.横浜国立大学 大学院都市イノベーション研究院)

キーワード:暑熱熱環境、計算機シミュレーション、人工排熱、エネルギー地産地消、地球シミュレータ、MSSGモデル

本研究では、ヒートアイランド現象改善など夏季の街中の暑熱環境の改善を産官学民で取り組むプロジェクトので得られた知見を報告する。本報告で対象とする街区は、横浜市みなとみらい21地区(以下、MM21地区)である。都市街区において、暑熱環境に影響を与える要因としては、その都市が沿岸部か内陸部に位置するかによる外部気象・気候条件、その都市内のグリーンインフラ面積などの土地被覆条件、さらには、建ぺい率などの建物配置条件、などが挙げられる。これからに加えて、人間活動によるエネルギー消費から生じる人工排熱が大気へ放出されることも、挙げられる。本研究では、後者の、人工排熱の放出に起因する街中、特に、歩行者空間における暑熱環境を数値シミュレーション手法を用いて解析した結果を報告する。来る気候変化時代において、快適な街区空間を造り出すために、人工排熱の放出手法として、以下の4つの場合を考案し、それぞれの特徴を報告する。
(1)現況:
MM21地区では、現在、地域冷暖房システム(以下DHC)が稼働している。これは、各ビルで消費されるエネルギー人工排熱を、2ヵ所のプラントに集め、集中的に排熱するシステムである。つまり、各建物からは人工排熱の放出がない。本ケースをコントロールケースとして扱う。
(2)個別排熱方式:
上記DHCシステムを取り入れず、各建屋から床面積に応じた排熱を行った場合。総排熱量は、コントロールケースと同じとする。
(3)エネルギー地産地消:
エネルギー地産地消を目指し、MM21地区内に、地区で消費される電力の60%を発電するコジェネレーション発電設備(CGS)を設置した場合。DHCシステムからの排熱に加え、CGSからの排熱が加算されるため、街区内からの総排熱量が増加する。
(4)海水排熱併用:
DHCシステムからの排熱のうち冷却塔排熱分を大気ではなく海水と熱交換した場合。これにより、大気への潜熱放出が大幅に減る。

結果、大規模な排熱施設を設けた場合の(1)、(3)のケースにおいて、良い暑熱環境を生み、(2)のケースが、逆に温度上昇を生じさせることが分かった。特に、(1)より(3)において改善が見られ、エネルギー地産地消による排熱量の増加が、暑熱環境の劣悪化につながらないことが分かった。講演では、その詳細なメカニズムを報告する。