日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS16] 火山噴煙・積乱雲のモデリングと観測

2019年5月30日(木) 09:00 〜 10:30 A05 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:佐藤 英一(気象研究所)、前野 深(東京大学地震研究所)、前坂 剛(防災科学技術研究所)、座長:佐藤 英一(気象研究所)

09:45 〜 10:00

[MIS16-04] 数値シミュレーションによる口永良部島火山の最近の爆発的噴火における噴煙の噴出条件の検討

*石峯 康浩1及川 輝樹2下司 信夫2 (1.鹿児島大学地震火山地域防災センター、2.産業技術総合研究所地質調査総合センター )

キーワード:口永良部島火山、火砕密度流、数値シミュレーション

口永良部島火山では2014年、2015年の噴火に引き続き、2018年10月から火山活動が活発化し、同年12月18日、翌2019年1月17日ならびに同月29日と噴火が相次いでいる(2019年2月19日現在)。これらの噴火では、噴煙を発生させる爆発的噴火に伴って小規模な火砕流がたびたび発生している点が大きな特徴である。火砕流は極めて危険な火山現象であるため、火砕流の発生メカニズムを理解することは学術的に重要であるばかりでなく、火山周辺の居住地域への到達リスクを評価する上でも極めて優先度が高い課題である。

我々は2014年から2019年までに口永良部島火山で発生した火砕流を伴う爆発的噴火の映像データや噴出物分布を基に可能な限り噴煙の噴出条件を特定し、その条件を利用した噴煙の噴出シミュレーションを行った。計算は理化学研究所のスーパーコンピュータ・システムHOKUSAI(課題番号Q18431)を利用して実施した。

本研究では噴煙の初期温度、初期密度、噴出速度を噴煙の振舞を支配する主要なパラメータと仮定して、これらの値を変えた計算を実施し、実現象に近いパラメータセットを探索した。その結果、一定の条件下で火砕流が発生する計算結果が得られた。火砕流の発生条件としては、特に、噴煙の噴出温度が重要であり、800K以下の場合には火砕流となる可能性が高いことが示された。これは、これまで火砕流が発生した噴火はいずれも熱水変質物に富む比較的低温な噴出物を放出したこととも整合的である。

また、数値シミュレーションによって、口永良部島火山の火砕流が山体の西側斜面を中心に流れ広がる傾向が高いのは、火口東側の南北に連なる尾根が影響していることも示唆された。これも、口永良部島火山におけるこれまでの観測結果と整合的である。