日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-04] 社会とJpGUとの相互交流によって創る新しい地球惑星科学教育

2019年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 106 (1F)

コンビーナ:藤原 靖(神奈川県立向の岡工業高等学校 定時制・総合学科)、秋本 弘章(獨協大学経済学部)、座長:藤原 靖(神奈川県立向の岡工業高等学校 定時制・総合学科)、秋本 弘章(獨協大学)

13:45 〜 14:15

[O04-01] 次期学習指導要領で世界標準の地学・地理教育を日本から発信するために

★招待講演

*滝川 洋二1 (1.NPO法人理科カリキュラムを考える会 NPO法人ガリレオ工房)

キーワード:新学習指導要領、アクティブ・ラーニング、探究活動、高大接続改革、STEM教育、少子高齢化とIT時代

以前、理科の研究会で高校の地学の先生が、危険なところを予測して撮った自分の地域の地震前後の写真を授業に使っていると紹介していました。どこが危ないかは予測できるのだと知りました。別の地学の先生は、私の高校に来ないかと誘った校長に挨拶に行き、「こんな低地の危険な学校には勤めたくない」と断ったとのこと。現状では変わった先生と思われるかもしれませんが、こういった知識が市民常識になっていれば、地震大国の日本の危機管理は全く違っていたのではと思います。地学教育―自然地理学,地質学,鉱物学,地球物理学、海洋学、気象学などーの学びが地震、防災、環境の理解の不可欠なことだと、このことからもわかります。

ところが、地学の先生は、現状で日本全体から見れば絶滅危惧種。このままでは、地学教育の最前線から撤退を余儀なくされるかもしれない状況だと聞きます。

一方で、新学習指導要領では、学び方では主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)を重視し、知識だけでなく、生徒の探究を大切にすることがかかげられています。この方向性は、OECDのPISAテスト、イギリスのナショナルカリキュラム、アメリカの科学教育スタンダードNGSSなどにも共通しています。簡単に言えば、子どもが生涯学び続ける意欲と方法とその基礎になる生きた知識を、ともに身につけることが大切なことだと考えられています。そのため、とりわけ高校と大学が知識注入型の教育から、学びの方向性を変えるために大学入試のあり方も文科省は変えようとしています。

少子高齢化とITが急激に社会を変えつつある時代に、次の時代にふさわしい子どもを育てる教育内容や方法をかなり急いで明らかにしなければならない節目に差し掛かっているのだろうと感じます。それは地学・地理教育では、改めて何をどう教えるのか、意義を考え直し、日本から地学・地理教育を世界に再発信する機会にしなければならない時期でもあり、意味ある方向に取り組んでいただければと思います。