日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM16] 大気圏・電離圏

2019年5月29日(水) 10:45 〜 12:15 A03 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、津川 卓也(情報通信研究機構)、川村 誠治(国立研究開発法人 情報通信研究機構)、座長:大塚 雄一江尻 省(国立極地研究所)

12:00 〜 12:15

[PEM16-12] 地デジ放送波を用いた水蒸気量推定手法の研究開発 -マイクロ波放射計との同時観測-

*花土 弘1川村 誠治1岩井 宏徳1佐藤 晋介1中川 勝広1田尻 拓也2折笠 成宏2小司 禎教2荒木 健太郎2瀬古 弘2 (1.国立研究開発法人 情報通信研究機構、2.気象庁気象研究所)

キーワード:水蒸気、地デジ、伝搬遅延

はじめに NICTでは、水蒸気を広範囲で効率的に観測できる手法の開発を行っている。水蒸気は、気象現象の予測において、風速・温度と並んで重要な量であるが、気体状態の水でレーダでは観測できず、広範囲で観測可能となる方法が限られている。現在、気象数値モデルで水蒸気データとして利用されているGPS/GNSS可降水量観測は、衛星からのLバンドの電波の遅延量を利用しているが、地デジ放送波(UHF帯)で同様の測定が可能であることを実証した[1]。その手法は地デジ放送波に含まれている基準信号から遅延プロファイルを復号し、送信局から直接伝わる波(直達波)と周囲の反射体から反射され伝わる波(反射波)を時間的に分離、それらの位相差を使うことで、放送局・受信点での基準信号の位相雑音の影響をキャンセルし、UHF帯の電波の伝搬遅延をピコ秒レベルの精度で測定する。 マイクロ放射計との同時観測について 2017年2月に気象研究所屋上にマイクロ波放射計と地デジ放送波受信装置を設置し、長期観測を継続中である。マイクロ波放射計は測定点の上空の鉛直方向に積算された水蒸気量の観測が可能な測器である。それに対し、地デジ放送波による水蒸気量推定では、地表付近の高度の水蒸気量を水平方向に積算された形での水蒸気量の観測であり、観測体積が異なるため、両者を組み合わせることで相補的な水蒸気量推定の可能性が期待される。時間分解能の点では、マイクロ波放射計ではアンテナビームを複数方向に向けて、それらの熱雑音の受信電力データから推定することから、それほど高くないが、地デジ受信での推定では、1秒間に約50程度のサンプルが測定されており、かなり高い時間分解能を有している点が異なる。本発表では約1年半に渡るマイクロ波放射計と地デジ放送波により観測された水蒸気量の変動を比較し、両者の測定装置としての特性の違いに着目して解析結果を紹介する。