日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG58] 脆性延性境界と超臨界地殻流体:島弧地殻エネルギー

2019年5月30日(木) 15:30 〜 17:00 A09 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:土屋 範芳(東北大学大学院環境科学研究科環境科学専攻)、浅沼 宏(産業技術総合研究所・再生可能エネルギー研究センター)、小川 康雄(東京工業大学理学院火山流体研究センター)、長縄 成実(国立大学法人秋田大学)、座長:土屋 範芳

15:30 〜 15:45

[SCG58-07] 表面波トモグラフィ解析による火山地域の3次元S波速構造の推定

*二宮 啓1池田 達紀1辻 健1 (1.九州大学)

キーワード:表面波トモグラフィ、S波速度構造、雑微動、火山、地熱

地熱資源を能動的に開発するEGS (Engineered / Enhanced Geothermal System)発電は、大規模な未利用エネルギーになる可能性やCO2排出量削減の観点から非常に重要なエネルギー源になると期待されている。一方でEGSの実現には課題も残っている。EGSには超臨界流体の存在が必要不可欠であるが、その存在はまだ明確に観測されていない。超臨界流体は脆性―延性境界以深に存在すると考えられているが、脆性―延性境界周辺の構造や物性が明らかになっていないのが現状である。また、EGSは開発期間が長く、開発コストが高いため、発電に適した地域を正確に評価する必要がある。これらの問題を解決するためには、開発地域の浅部から深部までの詳細な地下構造を空間的に把握する必要がある。

近年、地下構造の推定方法として微動に含まれる表面波を用いた解析が注目されている。この解析では、微動から表面波の位相速度を推定し、そのS波速度依存性から地下のS波速度構造が推定される。微動を利用する解析手法は、地熱地域などの人工震源を用いた探査が難しい地域に対しても適用可能である。また、EGSは開発期間が長く、長期間のモニタリングを行う必要があるが、微動のシグナルは連続的に得られるため、表面波を用いた解析によって地下を連続モニタリングすることも可能である。

本研究では、防災科学技術研究所のHi-netに記録された1年間の地震波形データを使用した。より詳細な速度構造を推定するためには、局所的な構造を反映できる短い観測点間の位相速度を推定する必要がある。そこで本研究では、観測点間の位相速度を周波数領域で計算することで、観測点間距離の制約(高周波近似)を緩和し、より多くの観測点間の位相速度を抽出した。抽出した観測点間の位相速度に対し、トモグラフィ解析を適用することで3次元S波速度構造を推定した。その結果、浅間山や那須岳などの活火山において深部に低速度帯を観測した。これらの低速度帯は火山性流体を反映していると考えられる。地熱地域や火山周辺に密に地震計を設置することで、より高い解像度で地下のS波速度構造を推定し、EGSに適した地域を評価できると考えられる。