日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT24] Attenuation from crust to core: in situ experiments, observaions and implications

2019年5月26日(日) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:小西 健介(台湾中央研究院地球科学研究所)、片山 郁夫(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)、芳野 極(岡山大学惑星物質研究所)、Alexandre Schubnel(CNRS)

[SIT24-P06] サーマルクラックの入った花崗岩における間隙水圧の弾性波減衰への影響

*山田 恵也1澤山 和貴2片山 郁夫1 (1.広島大学、2.九州大学)

キーワード:弾性波減衰、間隙水圧、弾性波速度、庵治花崗岩、サーマルクラック

弾性波減衰は, 物理探査により地下構造を推定するための重要な物性の1つであり, それはクラックや間隙流体の存在に敏感である. 特に間隙水圧は, 地熱発電や地震に密接に関係する不可欠なパラメータである. 間隙水圧を定量的に推定することや経年変化を観測することは, 正確な地熱貯留層の評価や地震発生の予測に繋がり得る. したがって, 弾性波減衰と間隙水圧の定量的な関係を理解することが重要である. これまでの実験的研究では, 間隙水圧を一定にし, 封圧を増加させて弾性波減衰を測定している. しかしながら, 間隙水圧の変化に着目し弾性波減衰を測定した例は少ない. 本研究では, サーマルクラックの入った花崗岩を用いて三軸圧縮試験を行い, 間隙水圧が弾性波減衰に与える影響を検証した.
 本研究で使用した試料は全て庵治花崗岩である. 試料は, 同一のブロックからコアリングし円柱状に成形した(直径20 mm, 長さ40 mm). サーマルクラックは, 200, 400, 600℃までゆっくり加熱・冷却することで生じさせた. それにより, 空隙率(初期0.6%)は, それぞれ0.8, 0.9, 2.8%まで増加した. 三軸圧縮試験は, 広島大学設置の容器内変形透水試験機を用いて, 室温で無水条件と含水条件(完全な水飽和)で行った. 無水条件では封圧を60 MPaまで増加させ, 含水条件では封圧を60 MPaで一定に保ちながら間隙水圧を50 MPaから大気圧まで減少させた. 弾性波は, 試料の両側面に圧電素子を直接貼り付けてパルス透過法で測定した. 弾性波速度(Vp, Vs)はオシロスコープで記録した波形から算出し, 弾性波減衰(Qp-1, Qs-1)はフーリエスペクトル比法を用いて推定した.
 その結果, VpとVsは, 無水条件では封圧の増加に伴い増加するが, 含水条件では間隙水圧の増加に伴い減少した. 減衰において, Qp-1とQs-1は, 無水条件では封圧の増加に伴い減少したが, 含水条件では間隙水圧の増加に伴い増加した. これは封圧によりクラックが閉鎖されることで摩擦による減衰が小さくなったと考えられる. 600℃まで加熱した試料の実験において, 含水条件ではP波の減衰がS波よりも著しく小さくなり, 無水条件と異なる傾向が見られた. これは, 含水条件では間隙水の移動に起因する減衰が生じ, S波へより大きな影響を与えるからだと考えられる. 本研究の結果から, 間隙水圧の増加に対する速度と減衰の応答性は異なり, Vp/Vsは増加するがQp-1/Qs-1は減少する. 減衰は速度よりも大きく変化し, 間隙水圧の変化に敏感であるので, 弾性波減衰は地下の間隙水圧の変化を観測するのに有効であると言える.