JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS22] [JJ] 海洋物理学

2017年5月22日(月) 10:45 〜 12:15 302 (国際会議場 3F)

コンビーナ:東塚 知己(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、吉川 裕(京都大学大学院理学研究科)、Shinya Kouketsu(JAMSTEC Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)、田中 祐希(東京大学大学院理学系研究科)、座長:吉川 裕(京都大学大学院理学研究科)、座長:田中 祐希(東京大学大学院理学系研究科)

12:00 〜 12:15

[AOS22-12] ツバル国フナフチ環礁ラグーン内の汚濁物質輸送シミュレーション

*小池 海1増永 英治2横木 裕宗3 (1.茨城大学大学院理工学研究科、2.茨城大学広域水圏科学教育研究センター、3.茨城大学工学部都市システム工学科)

サンゴ礁などにより形成される環礁周辺の海洋構造の理解は、サンゴ礁やラグーン内環境の保全にとって必要不可欠である。ツバル国フナフチ環礁では、下水処理施設の整備不足により住宅などから発生した汚濁物質が、ラグーン海岸に流出していることが明らかとなっている(Fujitaら、 2013)。しかも、ラグーンと外洋との間での海水交換が生じる場所は、州島の切れ目などごく限られている。したがって、ラグーン内は外洋から隔離されており閉鎖性の高い海域である。州島居住域から流出した汚濁物質は、環礁の形成を担っているサンゴ礁の劣化を引き起こし、ひいては国土の喪失につながる可能性がある。
そこで本研究では、フナフチ環礁ラグーンを対象に海洋数値モデルSUNTANSを用いることでラグーン内の流動構造と物質輸送過程の再現を試みた。典型的な流動構造を再現するために、潮汐に加え6パターンの風速・風向を外力として与えた。また、州島からの汚濁物質を想定したパッシブトレーサーを用い、モデル内での汚濁物質の輸送過程の再現を行った。
計算の結果、ラグーン内の流動場は潮汐に比べ風による影響を強く受けることがわかった。潮流はラグーン中央部では0.008 m/s程度の流れしか発生させなかった。一方、風速5 m/sの風が吹いた場合ラグーン内の流速は0.1 m/sに達した。3パターンの風向条件による計算により、北東の風が吹いた場合に州島から流出した汚濁物質は最も多くラグーン外に輸送された。風速5 m/s・北東風の場合、83 %の州島起源の汚濁物質がラグーン外へ20日間で流出した。また、北西の風が吹いた場合にはラグーン内に長時間汚濁物質が滞留し、風速5 m/sの場合では35%の汚濁物質がラグーン外へ20日間で流出する結果となった。本研究による結果から、ラグーン内では風の条件が汚濁物質の輸送に強く影響していることが明らかとなった。