JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] [JJ] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2017年5月20日(土) 09:00 〜 10:30 301A (国際会議場 3F)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、座長:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)

10:00 〜 10:15

[G04-05] 地学データを用いた地学現象アニメーションの作成

*加藤 忠義1 (1.横浜市立もえぎ野中学校)

キーワード:GNSS、日本列島、地殻変動、GEONET、震央分布

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震以降も、日本列島各地で地震活動や火山活動などに伴う地殻変動が観測されており、日々変動を繰り返している。2016年4月14日には熊本地震が発生し、改めて地震が頻発する日本に生活する私たちの、地震に対する備えや日本列島の地球科学的な知識が必要であるということが明確になった。しかし、ベクトル図で示されることの多い地殻変動図は、一般の人が理解しにくいという問題点がある。また、現在の義務教育において「日本列島における地震活動や地殻変動」についても、日本列島に着目して学習する単元がほとんど無く、日本列島で地震が繰り返し起こる原因を考える機会が少ないといった現状がある。このような現状において、日本列島の地殻変動や地震分布を可視化したアニメーションを作成し、教育現場で活用することは極めて重要であるだろう。日本列島における水平時間変動アニメーションは、国土地理院がGNSS連続観測システム(GEONET)の観測結果から得られた結果をもとに可視化されたアニメーションが公開されているほか、加藤(2011)によって、地殻変動アニメーションの有用性が示唆されている。また、これらの地殻変動データや地震データは国土地理院や気象庁、USGSなどが一般公開しており、誰でもこれらの地学データを用いて地球規模の自然現象を連続的にとらえることができる。

本研究では、GEONETの観測結果から得られた結果を用いて、1996年から2017年までの公開されているデータをもとに、東北地方太平洋沖地震発生前後の日本列島の地殻変動を可視化し、巨大地震発生前後の地殻変動の変化をそれぞれアニメーションで表現することができた。また、加藤(2011)の研究を改良し、GEONETの観測結果に含まれる人為的な座標値のずれを補正することで、より長期的な地殻変動アニメーションを作成することができた。また、USGSが公開している世界の震央データを用いて、1973年1月から2017年1月までの震央分布アニメーションを作成することができた。

次期の学習指導要領改定に向けて、理科教育で設定されている「地球」の分野における特徴的な見方として“地球や宇宙に関する自然の事物・現象を主として時間的・空間的な視点で捉える”が示されている。今回作成した地殻変動アニメーションを用いれば、日本列島全体の地殻変動や、地域に即した変動も直接的にとらえることができ、生徒がとらえにくい「空間的・時間的に大きなスケールでの変動=大陸をはじめとして地球表面は、長い期間を経て連続的に変化している」という認識に加え、「日本列島も同様に絶えず変動している」という認識が増え、地学的な視点を養うとともに日本列島で発生する巨大地震に対する防災意識への関連付けもできるに違いない。これらの認識は日本に生活する人々に必須の知識として持つべき内容であり、義務教育で必ず学習すべき内容であるといえるだろう。
 
今後は、世界で観測されているGNSSデータを用いた全地球規模での最近の地殻変動や、地震による地域別の地殻変動を可視化した教材を作成することで、より地域に即した教材、資料として学校教育の現場や一般の人が、日本列島や地球全体の変動を理解する助けになるだろう。また、本研究で作成したようなアニメーションが学校教育の現場で取り入れられていくことで「日本列島の地球科学的な知識」の向上につながるだろう。