JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ41] [EJ] リスクコミュニケーションの未来-科学情報を社会にどう伝えるか

2017年5月20日(土) 10:45 〜 12:15 301B (国際会議場 3F)

コンビーナ:平田 直(東京大学地震研究所)、Schorlemmer Danijel(GFZ German Research Centre for Geosciences)、木村 玲欧(兵庫県立大学)、大友 章司(甲南女子大学)、座長:平田 直(東京大学地震研究所)、座長:木村 玲欧(兵庫県立大学環境人間学部)、座長:Schorlemmer Danijel(GFZ German Research Centre for Geosciences)、座長:大友 章司(甲南女子大学人間科学部心理学科)

11:30 〜 11:45

[MZZ41-04] 熊本地震が人々の地震へのリスク認知と情報源への信頼に及ぼした影響

*大友 章司1木村 玲欧2平田 直3 (1.甲南女子大学、2.兵庫県立大学、3.東京大学)

キーワード:熊本地震、リスク・コミュニケーション、リスク認知、社会的増幅、信頼

2016年に発生した熊本地震では、4月14日に前震とされるマグニチュード6.2の地震が発生し、2日後の4月16日に本震とされるマグニチュード7.3の地震が発生した。当初は、マグニチュード6.2の前震が本震で、それを上回る規模の地震は想定されていなかった。一連の地震を受けて、気象庁は従来のような余震発生確率の発表を取り止めるように方針転換した。このような熊本地震の経験やリスク・コミュニケーションの方針転換は、人々の地震に関するリスク認知や情報源に対する信頼に大きな影響を及ぼしたと考えられる。実際に、福島原発事故という想定外の災害が生じた後、人々の原子力に対するリスク認知や、政府や電力会社といった主要アクターへの信頼が悪化した(大友ら, 2014)。とくに、大規模な事故や災害の後にはリスクの社会的増幅(Slovic et al., 1991)が生じる。リスクの社会的増幅とは、大事故や災害によりリスクに対する評価や否定的反応が過剰に生じることである。そこで、本研究では熊本地震を経験した被災地の人々が、地震や地震情報源に対してどのように認知しているのか検討する。具体的には、前震、本震、気象庁の方針転換後における被災状況や対応行動を測定し、その後の地震に対するリスク認知や情報源に対する信頼に及ぼした影響について検討を加える。
本研究では、2016年の11月下旬から12月下旬にかけて熊本県の住民を対象に郵送調査を実施した。回答者は地震被害のレベルや人口比率の観点から抽出された。調査フレームは図に示す。とくに、前震、本震、気象庁方針転換の直後の被災状況や避難行動と、地震へのリスク認知、信頼(対象アクター:気象庁、政府、マスコミ、県、市町村)を分析に用いる。
本研究では、被災者が受けた被害の大きさだけなく、地震後や方針転換後の対応行動のパターンも、地震のリスク認知や情報源に対する信頼に影響を及ぼすことを明らかにする。とくに、前震から本震にかけて対応行動を変化させた被災者と変化させていない被災者との間でリスク認知や信頼に違いが生じていると考えられる。以上、地震に関するリスク・コミュニケーションのあり方について考察する。