JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

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[O-05] 高校生によるポスター発表

2017年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

13:45 〜 15:15

[O05-P16] 広戸風と地形の関係性に関する研究

*日野田 圭祐1、*早瀬 大貴1、*花房 拓豊1、福田 悠佑1、高橋 彰人1、近藤 葵1 (1.岡山県立津山高等学校)

キーワード:広戸風、気象、台風、空気の層、谷

岡山・鳥取県境にある那岐山(1240m)南側山麓地域(奈義町・旧勝北町・勝央町付近)では「広戸風」と呼ばれるおろし風が発生する。日本三大悪風(広戸風・清川だし・やまじ風)の1つに数えられ、台風が紀伊半島付近を通過する際に、鳥取平野の形状で収束した風が那岐山を越えて吹き下ろす北風で最大瞬間風速は50m/sを超え、建造物や農作物に甚大な被害を及ぼす。地元で猛威を振るう広戸風の被害軽減を目標に、広戸風予報に繋げる為に発生メカニズムを解明する研究を行った。地形と風の特色や安定層の存在高度に注目し、模型を用いた実験や気象データの分析、アンケートを実施した。この研究では広戸風を台風接近時に奈義・勝北・勝央付近で発生し、奈義アメダス風速観測において10m/s以上かつ津山・今岡(美作市)との風速差が2倍以上の風速の北風であると定義した。
先行研究では「安定層」という言葉が多くの論文に記載され、この研究における安定層で定義した。台風の空気は暖かく台風周辺が温暖な空気に覆われる、このとき台風は強い引き込む力をもっているので大陸付近の冷たい空気が温暖な空気の下に引き込まれて地上付近と上空の空気に温度差が発生することでできる境界であると考えた。
広戸風の実態調査のため、過去38年の全ての台風データ収集、分析、独自アンケートの実施、分析を以下の分野で行った。その結果、台風が紀伊半島付近を通過する際に発生し、発生時の奈義では津山などの周辺地域に比べ2~4倍の風速が観測され、発生時気温の変化は見られず、降水が確認できるもの、確認できないものがある。岡山県側に比べ鳥取県側の方が発生時の降水量が多いことが分った。また平成28年度台風10・16・18号接近時における発生状況を本校生徒対象にアンケートを行い強風の発生状況などを調べた。その結果、強風が発生する地域は従来広戸風が発生すると認識される範囲と一致していた。
那岐山周辺の空気の流れを観察するために模型実験を行った。岡山県北部、鳥取県の模型を製作しアクリル板で安定層を再現し、空気よりも重たいCO2ではなく気化させたエチレングリコールを用いて可視化し、以下のことについて実験をした。
「安定層の高さと風の強さによる風の流れの関係」目的:安定層と風速の関係性を発見する
その結果、安定層の高さによって煙が巻き返しの有無が見られ、煙が山の南側にたまった後に、
上空に吸い込まれて徐々に薄くなっていく様子が観察された。
「那岐山両側の谷の存在と発生の関係性」目的:那岐山両側の谷の存在と発生の関係性の確認
送風を山、東西の谷の3か所に分け、東西の谷への送風を止め山のみ送ったところ、全てに送風した時に比べ山の南側(広戸風発生地域)の風は弱まった。谷の2か所のみ風を流したところ、被害地域に設置した糸が東西の谷の方へとなびいた。
データ分析と模型実験より以下のことが分った。安定層の高さにより南側の風の流れに変化が見られたため、安定層の存在高度が広戸風発生に影響を及ぼし、また広戸風発生の要因には従来研究されてきた安定層や鳥取平野の形状の他に、那岐山東西に存在する谷が関わっている可能性があることを発見した。しかし今回の研究だけでは詳しい原因まではわからなかった。実験の際に明確に吹き降ろしたものは少なかったため、今回実験で考慮しなった条件も発生にも関係していると考えられる。